ギリシャデフォルト危機と海外FXへの影響、海外FX業者の対応
2015年7月8日更新
ギリシャのデフォルト危機が近づいてきています。ギリシャのデフォルト危機と為替相場の変動、海外FX業者の対応について解説します。
国のデフォルトとは
そもそもデフォルトというのは「債務不履行」、つまり借りたお金を返せないで返済義務が実行されないことを意味します。
国がデフォルトになってしまえば、外国からの借金を踏み倒すことになってしまうため、国としての信用が失墜し
- 失業率の急騰
- ハイパーインフレによる物資の不足
- 銀行の預金封鎖
- 国民の海外流出
- 治安の悪化
など様々な問題が発生してしまうのです。
ギリシャはなぜデフォルト危機に陥ってしまっているのか?
ギリシャ危機は2009年10月の政権交代時に、新政権が旧政権のEU加盟における国家ぐるみの粉飾決算を暴露したことがはじまりとなっています。
2001年にギリシャはEUに加盟するのですが、EU加盟には国の債務をGDPの60%以内、毎年の財政赤字をGDPの3%以内としなければならない基準があったのです。EU加盟国に国の経営が破たんしている国が入ってしまうと、他の加盟国にもマイナスの影響が出てしまうため、ある程度厳格な基準をつくっていたのです。
当時のギリシャは債務残高はGDPの110%を超えていたのですが、これではEUに加盟できないために粉飾決算をして、簡単に言えばウソをついて加盟をしたのです。2001年当時は2004年のアテネオリンピックがあったことなどから、なんとしてもEUに加盟しなければならない環境下にあったと言われています。
粉飾決算でEUに加盟していたギリシャですが、結局事実上のデフォルトになってしまい、「国債の50%をチャラにする」という措置が取られたのです。この影響はスペインやイタリアにも及んでしまいました。
事実上のデフォルトが起きた後は、EUの指示の元、緊縮財政を行いました。国支出「歳費」を減らすのが緊縮財政です。公務員の給与削減、年金、公共サービスの質の低下、税金の上昇など様々な手段が取られたのです。
結局痛みは国民が受けることとなり、この不満が募っている中、反緊縮派のチプラス氏が2014年の総選挙で政権を取ったのです。
EUとの約束の元、緊縮財政が行われていたはずでしたが、反緊縮派のチプラス首相は緊縮財政に反対することで政権についているため、緊縮財政を行わなくなってきたのです。
約束を守らないギリシャ政府に対して、国際通貨基金(IMF)などのお金を貸した側が業を煮やして融資が実行されなくなってきたのです。
その結果、2015年6月30日に国際通貨基金(IMF)への15億ユーロ(約2000億円)の返済期限を迎え、返済が行われていない状況となったのです。現時点(2015年7月1日)ではデフォルトではなく、延滞という状態になっています。
7月5日の国民投票
チプラス首相は国民投票によって国の進む道を決めることを、6月26日深夜のTV放送発表しました。
EUの緊縮財政のプランを受け入れることに「賛成」か?「反対」か?という国民投票です。
「賛成」の場合
財政健全化への道が示されるため、融資の続行というのが考えられます。ただし、反緊縮派のチプラス首相は退陣することになります。
「反対」の場合
緊縮財政はしないという判断になるため、EUからの離脱、通貨ユーロからの離脱を意味します。
FXへの影響は?
予測されるパターン1「デフォルト=ユーロ離脱」
国民投票の結果、デフォルトを受け入れるという事態になります。ユーロから旧通貨のドラクマになるということです。ドラクマの価値の下落は避けられません。借入時は強い通貨ユーロで借りている企業の経営破綻、住宅ローンなどの家計の破綻も連鎖的に発生し、実質賃金の低下など様々なマイナス影響が発生します。
賃金の低下と通貨の下落によって、対外競争力が増すことにより輸出が増加し、徐々に景気が回復していくという予測ができます。
ただし、一時的にはユーロで借入をした企業が破たんをしたり、新通貨ドラクマで返済するようなことになれば、貸し手側の損失も避けては通れません。結果的にギリシャだけの問題ではなく、貸し手が多いユーロ圏のダメージが大きく、ユーロの売りが大きくなることが予測されるのです。ユーロ自身の信用が落ち、ギリシャ以外の国にも財政破たん懸念の目が向けられることになります。
ユーロが大きく売りに傾くことが予測できます。
予測されるパターン2「デフォルト回避=ユーロ債権団の緊縮財政案を受け入れる」
緊縮財政を受け入れると国民が判断し、それが実行されるのであれば資金援助、融資も元のように行われるため、破たんを回避できることとなります。
反緊縮派のチプラス首相は退陣に追い込まれてしまいますが、ユーロ圏全体でギリシャの再建をする形になります。
ユーロ通貨への影響は少ないものと予測されます。現時点では、「ギリシャがユーロ債権団の緊縮財政案を受け入れる用意がある」という報道が出ただけで、リスクテークの流れにマーケットが動き、ユーロ買いが優勢になっているのです。
ユーロへの影響は軽微で妥協の範囲内に納まると考えられます。
海外FX業者の対応
今のところ、あまり大きな動きは見られませんがXM(エックスエム)だけが一時的なレバレッジ制限を打ち出しています。
XM(エックスエム)
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最近のギリシャ問題の展開及び2015年7月5日(日)に予定されているギリシャ国民投票の 影響により、市場流動性の低下、異常なスプレッドや価格設定のギャップが引き起こされ、異 常な市場状況や極度の市場ボラティリティを伴う市場混乱が起こる可能性があります。
予想される市場の混乱からお客様と弊社を守るため、XMは以下の対策を採ることを決定 致しました:
2015年7月3日(金)、サーバー時間21:00(日本時間7月4日(土)午前 3:00)(市場閉鎖の3時間前)以降、全ての口座の最大レバレッジを一時的に 50倍に設定し、それに伴い必要証拠金を2%に引き上げます。必要証拠金への 変更は、既存のポジション及び新規注文の両方に適用されます。
こちらの一時的な措置は2015年7月6日(月)の市場開始後2時間以内に撤回され、必要証 拠金はお客様の口座の以前のレバレッジ設定に基づいて自動的に再調整されます 。
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7月5日の国民投票を前に他の海外FX業者もレバレッジ制限をする可能性があります。海外FX業者からのお知らせメールなどを注視しておきましょう。
7月5日の国民投票の結果
- 反対 61.31%
- 賛成 38.69%
- 投票率 62.5%
とEUの緊縮財政プランへの賛否を問う国民投票の結果、反対票が賛成票を当初の予想よりも大きく上回る結果となりました。
チプラス首相はこの結果を武器にEUなどの債権団と再交渉をする姿勢を見せています。
この結果、ユーロは一時全面安の展開となりました。
しかし、EUとたびたび衝突していたギリシャのバルファキス財務相の辞任報道が出て反発しているのです。バルファキス財務相の辞任というのが債権団との交渉に対してプラスに働くということが期待されるからです。
ドイツ銀行FX戦略部門グローバル責任者、アラン・ラスキン氏の発言
「起こりうる最悪のケース、特にギリシャのユーロ圏離脱というシナリオはこれまでのところ、それほどユーロへの打撃になっていない。一方で最良のケースである交渉による解決というシナリオもユーロを買う大きな理由ではない。長期的に信頼できる合意達成は困難とみられるからだ」
と話しています。
米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)
「ギリシャのユーロ圏離脱の可能性は、しない可能性を上回る」との見解を示しました。
つまり、国民投票自体は終わって「反対」という結論になったものの
- ギリシャのデフォルト危機というものは何も解決しておらず、ユーロ離脱、デフォルト、ユーロ全体の信用が損なわれるというシナリオ
と
- 債権団とギリシャ政府との交渉がまとまり、追加の融資と経営再建のプランが進むというシナリオ
のどちらも生きているということを示しています。ギリシャとしては民意が緊縮財政プランを反対したことで、強気で債権団と交渉できると考えていますが、ユーロ側もここでギリシャだけを特別扱いしてしまえば、同じような状況にあるスペインやポルトガルが黙っていないという状況もあるため、一筋縄ではいかない状況なのです。
要人の発言や報道などの情報でもユーロの価格変動は大きくなることが予測され、海外FXでも大きなチャンスが続いていることはまちがえないでしょう。
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