日銀のイールドカーブ・コントロール導入の狙いと今後の為替相場への影響

日銀のイールドカーブ・コントロール導入の狙いと今後の為替相場への影響

graphline128 1289月21日の日銀の金融政策決定会合でイールドカーブ・ターゲットの導入が発表されました。導入の背景とそ今後の為替相場への影響について解説します。

イールドカーブ・コントロールとは?

イールドカーブとは

縦軸を「債券の利回り」、横軸を「債券の残存期間(満期日までの期間)」として、両者の関係を表す曲線のことを言います。

イールドカーブが平らな状態 = フラット
イールドカーブの傾斜が急な状態 = スティーブ

となります。

今回の日銀のイールドカーブ・コントロールは、国債買入れを長期を少なくして、短期を増やすことによって、より急な傾斜にするスティーブ化を意図したものです。

その狙いと背景について解説します。

イールドカーブ・コントロール導入の背景

今回の日銀の金融政策決定会合では、今までの金融政策の「総括検証」をしています。

元々、日銀は物価を2.0%上昇させて、インフレにするために大規模な金融緩和を繰り返してきたのです。市場にお金が増えれば、円の価値が相対的に下がり、円安になります。円安になれば輸出企業を中心として株価が上昇するとともに、企業の利益が増え、従業員の給料が増え、好景気のサイクルに入ると考えていたからです。

しかし、「2年で2.0%の物価上昇」と約束した黒田総裁ですが、まったく目標には届かず、方針転換をする必要性に迫られていたのです。

日銀が発表した物価上昇ができていない理由

  1. 原油価格の下落
  2. 消費税率引上後の需要の弱さ
  3. 新興国経済の減速と国際金融市場の不安定な動き

「原油価格の下落」と「新興国経済の減速と国際金融市場の不安定な動き」はどちらもリスクオフによる円買いの動きを助長するものです。結果として円が買われてしまい、円安ではなく、円高になってしまうのです。

また、「消費税の増税」は消費を冷え込ませてしまい、物価上昇とは逆の圧力を生んでしまったのも事実なのです。

その結果、日銀が行った追加の金融施策

  • マイナス金利の導入
  • 上場投資信託(ETF)購入の倍増

ですが、ここでも問題が発生し、マイナス金利の導入は住宅ローン金利の引き下げなどの効果はあった反面、銀行や保険会社、年金基金など多くのお金を預かっている組織が日銀や国債運用への利子収入で利益を出していたのですが、マイナス金利になり、それができなくなってしまったのです。

メガバンクや地方銀行の収益は大幅に悪化し、保険会社などは終身保険の提供を辞めるなど、色々な影響が出てきていたのです。

この問題もイールドカーブ・ターゲット導入の要因となっています。

イールドカーブ・コントロール導入の狙い

イールドカーブ・コントロールの実行方法

  • 短期の国債買入れを増やす
  • 長期の国債買入れを減らす
  • 国債買入れの総量は変えない
  • 10年もの国債金利は0.0%をターゲットにする

というものです。

短期の国債買入れを増やす

→ 今よりも短期の金利が下がるので、銀行の企業への貸付金利はより低金利に

長期の国債買入れを減らす

→ 今よりも長期の金利が上がるので、銀行や保険会社の資産の運用益は出やすくなる

国債買入れの総量は変えない

→ 投資家に対して国債買入れは続けることをアピールして、株価の維持を狙う

という目論見があるのです。

さらに今回は「インフレ率が2.0%になった途端に国債買入れを辞めたりはしませんよ。」という「オーバーシュート型コミットメント」も導入しています。

これも国債買入れを辞めた瞬間に株価が下がるリスクを警戒する投資家に対するアピールといえます

イールドカーブ・コントロール導入による為替相場への影響

結論

  • 日銀の金融政策の限界を露呈している
  • 円高が進むことが予測される

理由

イールドカーブ・コントロールは簡単ではない

イールドカーブ・コントロールというのは簡単ではありません。狙った金利に着地させるためにどのくらい国債買入れをすれば良いのか?調整が極めて難しいのです。

銀行や保険会社などの金融機関に対して「長期国債の金利を上げるので運用がしやすくなりますよ。」とアピールしているということは、金融機関は長期国債を買いますから、買い手が増えれば金利は下がるのです。結果狙った金利よりも低金利のマイナス金利の状態が続く可能性があるのです。

言い訳を先に並べている

2年で2%のインフレ目標が崩れてしまい、その言い訳を並べている状態です。

極端に言えば「リスクオフ時に変われてしまう日本円は、日銀の力だけではコントロールができない」ということを表明したようなものです。

世界経済のリスクは、依然としてくすぶっているのですから、円高圧力の方が高いのは当然なのです。

ETF買入れによって株価は安定

日銀が上場投資信託(ETF)を買いまくったおかげで、日経平均株価などは円高が進んでも、それほど下がっていません。

ということは、日銀は焦って追加金融緩和をしなくても、一定の株価は維持できると踏んでいる可能性が高いのです。

よほど極端な円高にならない限りは、大きな追加緩和はしないと考えられます。

銀行や保険会社への配慮が必要だった。ということ

今回のイールドカーブ・ターゲットの導入は、マイナス金利の導入で割を食っている銀行や保険会社への配慮が必要だったことの証左です。

マイナス金利の拡大という金融緩和の方法もありますが、日銀はなかなかそれに踏み切れないのではないかと推察されるのです。

まとめ

今回の日銀の総括的検証はある意味での金融引き締めであり、円高圧力への日銀の対抗力には限界があることを露呈した「言い訳とご機嫌取りの産物」です。

発表後、為替相場は乱高下していますが、それほど大きな動きではなく、あまり市場に対して影響を与えていないと言っていいでしょう。

今後は、円高に進む可能性が高いのです。

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