海外FXのメリットの1つがゼロカットです。ゼロカットとは、国内FXにはないロスカットのシステムで、トレーダーは万が一の時でも負債を抱える心配がありません。
「えっ?国内でもロスカットはあるから負債は出ないよね。」と思われる方もいると思いますが、国内FXのロスカットシステムでは最悪の場合に残高がマイナスになる可能性があるのです。
海外FXのゼロカットとは
ゼロカットとは、
このゼロカットは、海外FX特有のシステムで国内では採用されていません。
ここで、そもそもロスカットはどのような仕組みになっているか、ロスカットが間に合わないとはどういうことなのか疑問に思う方もいるでしょう。
ロスカットとは?
まずは、ロスカットについて詳しく見ていきましょう。
ロスカットとは、
ロスカットはなぜある?
FXは証拠金取引と呼ばれる金融商品で、レバレッジをかけて資金以上の取引きができることが大きな特徴です。国内・海外を問わず、FXでは一般的にロスカットが採用されています。
資金以上の取引きをするということは、損失が出始めた時には資金以上のマイナス額を出してしまう可能性があるのです。残高がマイナスだということは、FX業者に借金をしていることを意味しているのです。
もし、マイナス額がどんどん大きくなって収拾がつかないくらいの金額になってしまうと、トレーダーは簡単に返済することができません。中には全財産を失い借金して返すトレーダーもいるわけです。マイナス額が回収できなければ、それはFX業者の損失にもつながります。
2010年になって、初めて国内ではFX業者に「レバレッジ最大25倍」「ロスカット義務づけ」の規制が導入されました。海外でもFXのようなレバレッジ取引にはロスカットが採用されているのが一般的です。
ちなみに以下の記事ではレバレッジ規制について詳しく解説しています。関心がある方はこちらもご覧になってみて下さい。
ロスカット水準とは?
通常、海外FXでも国内FXでも、損失がどれくらいまで拡大したらロスカットされるのかを示す「ロスカット水準」が表記されています。
ロスカット水準は、基本的に「証拠金維持率が〇〇%」というように規定されていて、業者ごとにパーセンテージは異なります。
- 海外FXのロスカット水準 → 20%~30%
- 国内FXのロスカット水準 → 50%~100%
が平均的な水準です。
大抵の場合、証拠金維持率は口座情報・取引状況で確認できるようになっています。
証拠金維持率とは?
証拠金維持率とは、
証拠金維持率(Margin level)
= 有効証拠金(Margin) ÷ 必要証拠金(Free Margin)
で計算されています。
証拠金維持率は、各自の資産状況・運用状況を計る目安となります。、証拠金維持率が高いほど資金に余裕がある取引をしていて安全な状態と見ることができます。
追証とは?
追証とは、
有効証拠金が少なくなってくると、ロスカットへの注意喚起として国内FX業者は「追証の必要性」をメールや取引画面で知らせてきます。業者によっては、ロスカット以外でも追証基準が決められて、追加の入金が義務付けられる場合もあります。
海外FXでは「追証」は「Margin Call /マージンコール」といって、追加の入金は自己判断となっています。
「マージンコール」を受けてから入金すれば、有効証拠金が増えるため証拠金維持率も高くなります。ロスカットまでの猶予を延長するために本人が判断して入金する仕組みになっています。
海外FXゼロカットの仕組み
海外FXでは「ゼロカット・追証なし」が定番となっていて、ネットで海外FXの情報を検索していると、よく目にするかと思います。
ほとんどの海外FX業者が「ゼロカット・追証なし」のシステムを導入しています。
「ゼロカット・追証なし」とは
「ゼロカット・追証なし」とは、
ゼロカットは、残高がマイナスになったとしてもゼロで相殺されるシステムですが、単に取引ツールの数字をゼロに戻してくれるわけではないのですね。
現実には、マイナスの資金が生じているわけで、このマイナス額は海外FX業者が補填してくれているのです。つまり、取引で生じた損失分を海外FX業者が自腹で払ってくれているということです。
というのが海外FXの「ゼロカット・追証なし」の仕組みです。
ロスカット・マージンコールでは放置しておくとロスカットになりますので、注意して下さい。
国内FXの場合
国内FXでは、ゼロカットを導入する業者は今のところありません。
もし、ロスカットが間に合わずに残高がマイナスになった場合は、追証でFX業者に返済しなければなりません。
なぜ海外FXはゼロカットなのか
海外FXでは、業者が損する可能性があるのに、なぜゼロカットを導入しているのでしょうか。これにはいくつかの理由が考えられます。
理由1.金融商取引法で規定されているから
理由の1つは、海外FX業者が取得している金融ライセンスにて義務づけられているケースあるからです。キプロスのラインセンスを取得する海外FX業者は多いのですが、キプロス(欧州ESMA)では「ゼロカット・追証なし」が義務付けられています。
理由2.トレーダーに取引してほしいから
もう1つの理由は、トレーダーに積極的に取引してほしいからです。海外FXではNDD方式が主流で、業者はスプレッドや手数料で収益を得ています。ゼロカットを提供することで、トレーダーは安心してトレードしてくれます。トレーダーの取引き量が増えると海外FX業者も儲かるのです。
理由3.集客につながるから
そして、日本のようにゼロカットがない国から集客できることも理由として考えられます。ロスカットで借金を負う恐れがあるよりは、当然ゼロカットの方が魅力的です。国内でも、ハイレバレッジだけでなくゼロカットがあることで海外FXを選ぶトレーダーは多いのです。
理由4.実は相対取引だからとの声も
業者が取引に介入しないNDD方式が海外FXでは主流になっているものの、実は相対取引(OTC取引)だからゼロカットでも損しないのだ、という声も一部聞かれています。実際には、100%すべての業者がNDD方式だというわけではなく、国内のように相対取引で対応している業者もあるようです。
なぜ国内FXはゼロカットがないのか
では、なぜ国内FXではゼロカットがないのでしょうか。
理由.金融商取引法で禁止されているから
国内でゼロカットが採用されていない理由は単純明快。日本では業者の損失補填が金融商品取引法で禁止されているのです。
金融商品取引法 第二節 第三十九条(損失補填の禁止)
なぜ、禁止されているかというと、損失補填は法律では金融業者の行き過ぎた勧誘・宣伝の1つと見なされているからです。
今となっては、がちがちに規制されている国内FXですが、規制される以前は、国内でも悪質なFX詐欺業者が普通に営業していました。損失はカバーするなどと口から出まかせで大金をだまし取るなど、被害に合った消費者が多かったようです。
以来、金融業者の勧誘・宣伝は厳しく取り締まられているのです。
海外FXゼロカットのメリット
ゼロカットは海外FXならではのメリットの1つです。トレーダーにとって、ゼロカットが有利となる局面をいくつかまとめてみました。
メリット1.安心してレバレッジがかけれる
効率よく稼げる一方、レバレッジの恐ろしい点は、資金以上の損失額が出てしまうことです。通常はロスカットによって、マイナスになる前に決済されますが、万が一ロスカットが間に合わなかった場合、残高がマイナスになってしまいます。
しかし、海外FXではゼロカットがあるので、仮に資金を失うことはあったとしても、少なくとも借金をつくる心配はありません。仮に、ハイレバレッジや大きめのロットで、マイナス額が数百万円以上だったとしても、残高はゼロで相殺されます。
メリット2.強気のトレードができる
もともとロスカット水準が低めの海外FXでは、ロスカットに合ってしまえば、確かに口座残高はほとんどなくなってしまいます。
しかし失う資金は口座に入金している金額のみです。ゼロカットがあれば、それ以上の損失が出る心配がありません。
あえて数万円しか入金しないなど、リスク管理さえしっかり行っておけば、ハイレバレッジで強気のトレードに挑むことも可能です。
国内FXでロスカットが間に合わなかった事例
ロスカットが間に合わないことはあるのか、と疑問に思う方もいるでしょう。
ゼロカットがいかにトレーダーにとって有利となるのか、国内FXでロスカットが間に合わなかった事例をいくつかご紹介します。
2021年3月22日 トルコリラ暴落
2021年3月22日に、トルコリラ円は15.122円から12.580円まで暴落しました。約15%以上の下落で、この日にロスカットが間に合わずに借金を負った投資家が続出しています。
金融先物取引業協会の調査によると、ロスカットの未収金発生口座数(ロスカットで残高がマイナスとなった口座)は、店頭FXで3280件、うち個人が3266件、総額で12億8700万円の損失額が発生しています。
1人あたりの平均は約37万2,000円となりますが、かなり高額な借金をつくってしまったトレーダーもいるでしょう。
他にも、ロスカットでマイナス残高が集中したのは、
などがあります。
ゼロカットのデメリット・注意点
トレーダーの味方に思えるゼロカットもメリットだけではありません。デメリットや注意点を最後に確認しておきましょう。
損失補填で海外FX業者の倒産リスクが強まる!
ゼロカットは、海外FX業者がマイナス額を補填する仕組みになっています。世界的な暴落にて、マイナス残高でのゼロカットが増えすぎてしまうと、海外FX業者の倒産リスクが強まります。損失補填で財政が厳しくなるからです。
運営実績が長い大手系の海外FX業者は、おそらく急の事態に備えていると思いますが、新規の業者や中小規模の業者だと持ちこたえられない可能性があります。
ゼロカット保証を撤回した海外FX業者もある!
過去に1度だけ、海外FX業者FXDDがゼロカット保証を撤回した事件がありました。2015年1月のスイスフランショックの時です。
スイスフランショックが起きる以前は「ゼロカット・追証なし」とアピールしていました、暴落後に突如「ゼロカット廃止」を発表したのです。当時利用していたトレーダーはマイナス額がFXDDから請求されることになりました。
他の海外FX業者は打撃を受けながらも、ゼロカットで対応しています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。何かと不安も多い海外FXですが、いざという時には逆に国内FXの方が危険であることがわかりました。
「ゼロカット・追証なし」で取引できる海外FXなら、突然訪れる暴落にも安心して使うことができるのです。
ただし、ゼロカットだからと安心しすぎて普段のリスク管理を怠らないように注意しましょう。ゼロカットは万が一の時には非常に頼もしいシステムですが、ロスカットは通常どおりにスパっと行われます。