海外FXの信託保全
海外FXの信託保全はどうなっているのでしょうか?日本では信託保全がFX業者に義務化されましたが、海外FX業者はレバレッジ規制が対象外なのと同様に信託保全の義務化も対象外なのです。
信託保全と分別保管(分別管理)
日本では、金融商品取引法(金商法)によって顧客資産の分別保管(分別管理)と信託保全が義務化されました。
日本では平成19年以降にFX業者の破たんが増え、顧客の資金返還がされない事案が日本国内で増加してしまったため、金融庁が2010年から証拠金の預託を受けた場合の区分管理方法を信託銀行への金銭信託に一本化したのです。
分別保管(分別管理)とは
顧客からの預かり資産とFX業者が企業を運営しているくために必要な資金を別の口座に分けて管理することを意味します。
以前は、FX業者の経営が傾いて利益が出ていない状況になると、顧客からの証拠金、つまり預かり資産を運転資金に流用してしまうケースが多かったのです。同じ銀行の銀行口座に「会社運営用の資金」と「顧客の証拠金」を一緒に預金していると、お金には色は付いていないので帳簿上では分けられていますが、そのまま「会社運営用の資金」として使われてしまい、倒産時に「顧客の証拠金」が残っていないという状況に陥ってしまうのです。
これではFX業者が倒産した場合、顧客の証拠金自体がなくなってしまっている流用リスクが発生していたのです。
- 「会社運営用の資金」(オフィスの家賃や広告宣伝費、社員の給与など)
- 「顧客の証拠金」
を別の銀行の別の銀行口座に預託して管理することを「分別保管(分別管理)」というのです。
信託保全とは
「分別保管(分別管理)」をしていると言われただけでは「顧客の投資資産が本当に守られているか?」が確実ではありません。
なぜなら、確かに同じ銀行口座で管理するよりは流用リスクは減ったと言えますが、FX業者の会社の経営が苦しいときに「まぁ、顧客資産の方の口座から使っちゃっても、すぐに戻せばいっか。」なんて考えてしまえば、すぐに資金を移動することができてしまうからです。
そこで登場するのが信託銀行です。
信託銀行とは信託業務をすることができる銀行のことを意味します。
信託とは
一定の目的にしたがって、所有する金銭や土地などの財産を受益者のために、受託者(信託銀行)に託し、運用・管理を任せる法的な枠組み
のことを言うのです。
FX業者は「顧客の資産は私たちの会社が倒産してしまっても、適切に顧客に戻してくださいね。」という顧客区分管理信託契約を信託銀行と締結して、顧客資産を信託銀行の口座に預託するのです。
この場合、FX業者は自社の経営の資金繰りが悪化したとしても、信託銀行の口座から「顧客の証拠金」を資金繰りに使うことを目的として引き出すことはできません。
つまり、流用リスクがほぼ完全になくなることになるのです。
「信託保全」を採用しているFX業者を利用すれば、FX業者が倒産したとしても、投資家の「証拠金=資産」は守られるのです。
信託保全の場合、FX業者が倒産した場合に外部機関である「信託管理人(弁護士・公認会計士など)」もしくは「信託法人」が責任を持って、信託銀行に預けている顧客資産を顧客に返還する形になっています。
海外FX業者の場合は「分別管理」か「信託保全」かは海外FX業者ごとに異なる
日本では「信託保全」が義務化されていますが、海外FX業者にはそのような規制はありません。
厳密に言えば、日本の金融庁のような金融監督庁が各国にあるのですが、一部の国では信託保全を義務付けられている国もあるのです。義務付けられていない国もあります。
海外FX業者の資産管理方法は、金融ライセンスを持つ国の金融監督庁の方針によってまちまちであると言えます。
また、金融監督庁には信託保全のルールがなくても、自主的に信託保全を採用している海外FX業者もあるのです。
海外FX業者の立場で「信託保全」を採用するメリットデメリット
当然、「分別管理 < 信託保全」の方が安全性が高い資産管理方法なので、「信託保全」を採用した方が顧客獲得は有利になります。安全な海外FX業者であることをアピールできるからです。
一方で、信託銀行と顧客区分管理信託契約を結ぶ、「信託管理人(弁護士・公認会計士など)」もしくは「信託法人」を使うとなれば、当然このスキームに対しての費用が大きくなります。
当然、安全を買うために運営コストは大きくなり、これはスプレッドや取引手数料にも反映されてしまうのです。
投資家の立場で「信託保全」を採用するメリットデメリット
メリットは、言うまでもなく安心して高額な資産でも預託できることです。
デメリットは、信託保全を採用している海外FX業者は、その分「スプレッドが広い」「手数料が高い」という状態になりやすい。ということです。
信託保全を採用している海外FX業者のスプレッドが広いというのは、すべてではありませんが、仕組み上そういう傾向が強くなるということです。
極端に言えば、普段使っている証拠金が数万円程度であれば「分別管理」のみの海外FX業者を使った方が良いという判断もできるということです。
「信託保全=最高の海外FX業者」ではないことに注意が必要です。
海外FX業者に多い2万ユーロ(約250万円)までの信託保全
海外FX業者はICF (Investor Compensation Fund :投資家補償基金)という基金に加盟していることが多いです。これは自主的に信託銀行と契約して信託保全を行うとコストが割高になってしまうため、金融機関が利用しやすい信託保全の仕組みを基金という形で作っているのです。参加する複数の金融機関(海外FX業者)がコストを持ち寄って、信託保全のスキームを自社独自で作るときよりも安く利用させてもらうものと考えて良いでしょう。
海外FX業者がICF (投資家補償基金) に加盟していると、海外FX業者が万が一倒産したり、支払い義務を怠った場合でも、最大2万ユーロ(約250万円)は資産が保全されることになります。
この信託保全方法は「完全信託保全」ではなく「一部信託保全」という分類になります。
よほどの大口のトレーダーでない限り、海外FXで2万ユーロ(約250万円)を超える資金を証拠金として預けることはないと思われるので、ほとんどの投資家であれば、このICF (投資家補償基金)に加盟している海外FX業者であれば、十分な安全性があると考えられます。
それ以上の証拠金を利用する場合は2万ユーロ(約250万円)を超えたら別の銀行や海外FX業者に移すなど資金管理をしていくことをおすすめします。
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