MT4・MT5のEAを利用する際には、「バックテスト」である程度の運用予想を行うことができます。「バックテスト」は、あくまでもシミュレーションとして仮に運用した場合の結果が提示されるEAテストのことです。
MT4・MT5の「EAバックテスト」はどのように使えばいいのか、テスト結果はどのように見ればいいのか最初はわからないですよね。今回は、MT4・MT5の「EAバックテスト」のやり方やテスト結果の見方を解説していきます。ぜひ参考にして下さい。
MT4・MT5のEAバックテストとは
MT4・MT5では、100種類を超える実に豊富な種類のEAが利用できます。
国内FXでも自動売買や自動注文機能などのシステムトレードを導入する業者が増えてきていますよね。忙しくてチャートにつきっきりでトレードできない方や、MT4・MT5でEAを始めたい!と興味を持つ投資家も多いでしょう。
MT4・MT5のEAの情報を調べていると、「バックテスト」という言葉がよく出てきます。
EAバックテストの機能・特徴
EAバックテストとは、
EAのシュミレーションや検証に使われている機能のことで、すべてのMT4・MT5に標準搭載されています。一定期間での検証が終わると、レポートで成績結果が確認できます。
バックテスト レポートの例
レポートで表示される項目は、
- 期間
- 通貨ペア
- 時間足
- 残高
- 取引回数
- 勝ちトレード
- 負けトレード
- 利益
- 損失
- トータル損益
などの結果が確認できます。
取引状況、損益、勝率が確認できる
EAバックテストの結果から、過去のチャートのどの局面で売買を行っているのか、損益・勝率など、具体的にどのような成績が出せていたのかを見ることができます。
EAを利用する前に使う
EAを実際に開始する前に、バックテストを行うことで、結果次第で満足がいけば導入を決めたり、成績が悪いものは導入を見送ったり、条件設定を変えてみたりと判断の材料になります。
通貨ペアやトレード手法が検討できる
EAにも色々なタイプがあり、
- 特定の通貨ペアを狙ったもの
- 短期トレード型
- スイングトレード型
- 長期トレード型
- レンジ相場に強いもの
- トレンド相場に強いもの
など、特定の通貨ペアや相場では結果が出やすくても、通貨ペアや相場の情勢が変わると弱かったりと様々です。
ちなみにMT4・MT5を始める前の準備や探し方を知りたい方はこちらの記事をご覧下さい。
EAバックテストの注意点
バックテストは、あくまでも過去のデータ(チャート)に挿入して、運用状況を計るものです。将来の相場動向に対する成績を保証するわけではないのですね。結果がどうなるのかは、実際に使ってみないとわからない、というのが正直なところで、シュミレーション・検証材料として参考になるテストです。
EAバックテストのやり方
バックテストの設定方法
MT4・MT5のメニューバーから「ストラテジーテスター」のアイコンをクリックすると、バックテスト画面が表示されます。または、メニュー「表示」→「ストラテジーテスター」を選択して表示させることもできます。
メニューバーのアイコン
メニュー「表示」から選択
「ストラテジーテスター」の画面は、MT4・MT5のターミナル画面の下部に挿入されます。ひとまずは、ターミナル画面は消去しておいて、「ストラテジーテスター」の画面を上に引き上げて大きくしておくと見やすくなります。
ストラテジーテスターの画面を上に引き上げる
テストの条件を設定する
ストラテジーテストの画面にEAバックテストの条件を設定・入力します。
利用する海外FX業者によって、設定項目は若干異なりますが概ね以下のような内容です。
設定項目
- エキスパート:利用するEAを選択
- 銘柄:通貨ぺア、時間足を選択
- フォワードテスト:キャンセル(今のところは必要ないです)
- モデル:全ティック(精度が高い)
- 期間:バックテストの開始日と終了日
- 約定スピード(MT5):カスタム遅延が理想的
- スプレッド(MT5):現在値が望ましい
悩みがちな設定のポイントをいくつか補足で説明しておきます。
約定スピード・スプレッドはどれくらいがよい?
約定スピードは、好条件で設定しすぎると現実とのギャップが生じやすくなります。それぞれで利用する海外FX業者のシステム・サーバー、市場動向、地理的遅延などから約定力は左右されてしまいます。
「カスタム遅延」にしておけば、現実とのギャップが小さくなるため、より正確なテスト結果が期待できます。スプレッドも同様の理由から、「現在値」に設定した方がリアルです。
バックテストの項目「モデル」とは
モデルは、
- 全ティック
- コントロールポイント
- 始値のみ
の3種類から選択できます。
全ティック
全ティックは、1分足を使ったバックテストのモデルです。EAバックテストでは最も正確なテストができるといわれている方法です。精度が高い分、テスト完了までにやや時間がかかる傾向にあります。
コントロールポイント
コントロールポイントは、設定した時間足の1ランク短めの時間足を適用する方法です。日足の場合は4時間足、1時間足なら30分足と時間を短めにしてテストを行います。
始値のみ
始値のみを設定したモデルは、実際につけた始値のデータのみを使ってテストが行われますので、テストにかかる時間は短縮できますが精度はやや落ちます。
期間はどれくらいで設定すべきか
テストする期間は短すぎると一時的なデータが対象となるため信憑性がなくなり、長すぎるとデータが古くなりすぎて現実とのギャップが生じやすくなります。
それぞれの投資スタイルにもよりますが、最低でも1か月ぐらい、長くても1年ぐらいです。異なる期間をいくつか検証比較してみると最適な投資戦略が立てられるでしょう。
設定は色々と変えてみて検証する
バックテストを開始する方法
設定が完了したら右下にある「スタート」ボタンを押して、バックテストを開始します。
「スタート」ボタンの横にあるバーがすべて緑色になるバックテスト完了です。
テスト完了までの時間
テスト完了までにかかる時間は、EAの種類や設定した期間によって大きく変わってきます。
3か月未満であれば15分~数時間程度。3か月以上になると数時間程度。1年以上になると数時間~数日かかる場合もあります。テストに時間がかかることを理由に設定を変えるのは間違えです。正確なテストを実行するためには、完了するまで待つべきです。
テスト結果・レポートの見方
メニューの見方
ストラテジーテスターの一番下にメニューのタグがあります。
- 結果
- グラフ
- レポート
- 操作履歴(ストラテジーテスターの操作履歴なのでテストには関係ない)
バックテスト結果は、「結果」「グラフ」「レポート」と3つのタグをクリックして各詳細を確認します。
「結果」
「結果」では、EAが1回1回売買した取引履歴が確認できます。
- 取引時間
- Buy or Sell or Close (買い、売り、決済)
- 数量
- 価格
- 残高
などの詳細が一行ずつ表示されます。
「グラフ」
「グラフ」では口座残高の推移がライングラフで表示されます。一目で残高の状態が確認できます。
「レポート」
「レポート」では、バックテストの検証結果が細かく確認できます。
抑えておくべきチェックポイントは、
- 総損益 → 最終的な利益・損益(最も重要なポイントです)
- 純利益/純損益 → 利益の総額/損益の総額
- PF(プロフィットファクター) → 損失に対する利益率
- 勝敗/勝ち数と負け数
- 最大ドローダウン → 一番損失が大きかった時の損失率
- 勝率/負率 → 勝トレードと負けトレードの割合
- 勝トレード/敗トレード → 最大で勝った時の利益額/最大で負けた時の損失額
など。
レポートが英語表記の場合
英語表記のEAを使う方もいると思いますので、英語表記のレポートの見方を簡単に解説しておきます。
- Total net profit(総損益)
- Profit factor / PF(プロフィットファクター)
- Maxmal drawdown(最大ドローダウン)
- Gross profit・Gross loss(純利益・純損益)
- Largest profit trade・Largest loss trade(最大の利益額/最大の損失額)
- Profit trades・Loss trades(勝ちトレードの利益額/負けトレードの損失額)
- Consecutive wins・Consecutive loss(勝敗の数)
など
設定を変更・比較検証する方法
EAのバックテストは設定内容によって、結果が大きく変わってきます。EAの最適化を計るためにも異なる設定で比較検討してみる必要があります。
1回のバックテストが完了したら、今度は違う条件でテストしてみましょう。
検証パターン1
最初の1回目のEAバックテストは、
- 通貨ペア:米ドル/円
- 時間軸:1時間足
- モデル:全ティック
- 期間:1か月
でした。
テスト結果
- 初期証拠金:10,000ドル
- 総損益:最終的な利益は438.79ドル
検証パターン2/通貨ペアを変更
同じバックテスト設定で通貨ペアのみを「ユーロ/円」に変更してみます。最終的な損益額は-136.99ドルでした。
検証パターン3/時間足を変更
次に、検証パターン1の設定の時間足だけを「5分足」に変更してみます。そうすると損益額は-400ドルに拡大しました。
ちなみに、MT5なら「最適値」を自動的に検索してくれる「最適化機能」があるので便利です。
MT5の最適化機能
最適化機能がEAのバックテストで使えるのはMT5だけです。
1.設定画面で「最適化」にチェックを入れる
バックテストの設定画面の項目にある「最適化」にチェックを入れます。
2.「エキスパート編集」をクリック
「エキスパート編集」ボタンが表示されるのでクリックします。
3.「パラメーターの入力」を選択・変更
そうすると設定画面が表示されますので、上部にあるタグから「パラメーターの入力」を選択します。パラメーターの入力画面が出てきたら、設定値とスタート値が同じ数値になっています。
これをあえてスタート値を小さくして設定します。
例えば、このEAはMovingAverageというEAで下記のようなパラメーターの設定項目があります。
- Lots:最小ロット数
- MaximumRisk: 最大投資リスク(0.01~1.00まで指定可)
- DecreaseFactor:負けトレード回数によってロット数を下げる減少係数(通常は2~5)
- MovingPeriod:移動平均期間
- MovingShift:移動平均のシフト値
4.テスト結果から最適値を調べる
後は、スタートボタンを押してバックテストが完了するのを待ちます。バックテストが完了したら、「最適化結果」からどの期間が一番成績がよいのかを調べます。
一番成績がよい期間を設定して、EAを稼働させることができます。
レポートの保存方法
最後にEAバックテストのレポートを保存する方法をご紹介しておきます。
1.「結果」のページを右クリック
「結果」のページを開いて、画面上で右クリック、メニューから「レポートの保存」を選択します。
2.名前を付けて保存
EAのタイトルや、設定条件など分かるような名前を入力、ファイルの種類をHTMLで選択して保存します。
3.ブラウザーを選択
保存したレポートを見る時は、ブラウザーで見れるファイルなので表示するブラウザー(Chromeなど)選択して開いて下さい。
レポートのイメージ
MT4の場合は上記のようなレポートが表示できます。MT5は上記の内容に加えて、さらに細かいデーターが補足でついています。
まとめ
MT4・MT5のEAバックテストとは、
バックテストの結果は、あくまでもシミュレーションとして参考にすることができますが、実際のトレード結果とは異なることを留意しておくことが大切です。
バックテストは1回だけでなく、設定を変えたり、異なるEAで行ったりと、複数のテスト結果を比較検討することで最適なEAや効率のよい設定方法を見つけることができます。バックテストがすべてではありませんが、判断材料の1つになります。