海外FXの大きなデメリットの1つがスプレッドが広いこと。国内FXのスプレッドの狭さに馴れている投資家の中には、海外FXを始めた時にスプレッドの広さに驚いた方も少なくないでしょう。
海外FXでスプレッドを狭くするにはいくつか方法があって、利用する海外FX業者や海外FX口座によってスプレッドにも大きな差が出てきます。
中でもおすすめなのが手数料有料のECN口座を利用する方法です。手数料がかかると聞けば、思わずためらってしまうものですがコスト的にはECN口座の方が結局は経済的であるケースが多くなります。
海外FXのスプレッドはなぜ広い?
国内FXの場合、最近では米ドル/円のスプレッドで0.2pips、時には0.1pipsの固定スプレッドが提供されることも珍しくはありません。
そこで、いざ海外FXを始めてみた時に、米ドル/円で1.0pips、1.4pipsなどとスプレッドの設定が国内FXよりもかなり広くなっていることに戸惑ってしまうものです。これって海外FXでは普通なの?と疑問に思う方も多いでしょう。
スプレッドが広くなる理由がわかれば納得がいきますし、それなりに対策を考えていけます。
海外FXのスプレッドが広くなる理由
海外FXのスプレッド広くなる理由は、国内FXとは業者が採用している取引方法が違うからです。
国内FXはDD方式
国内FXの場合、店頭取引の流れがそのままオンラインサービスでも残っていて、国内FXではDD方式(ディーリング・デスク)と呼ばれる取引方法が主流です。
DD方式とは
呑み取引では顧客が損すると業者が儲かる
国内FX業者は受けた注文を自社内で処理しています。受けた注文をすべて実際に為替市場(インターバンク市場)で取引しているわけではありません。取引をせずに受け取った資金をそのまま保有しておけば、もし、顧客が損失を出した時に返還する資金が少なくて済むからです。
スプレッドが狭いかわりに、FX業者に不利な注文はスリッページや約定拒否になりやすい環境にあるといえます。
海外FX業者はNDD方式
一方、海外FX業者の場合は、NDD方式(ノーディーリングデスク)が採用されています。
NDD方式とは
リアルタイムスプレッドに手数料が上乗せされている
NDD方式では、リアルタイムで市場のレートが反映されるためスプレッドが拡がりやすく大きく変動する傾向にあります。さらに、スプレッドに海外FX業者が課す手数料が一定の比率で上乗せされています。
海外FX業者の利益は提携先の金融機関からのマージンと上乗せした手数料が主な収益となっているのです。
海外FXでスプレッドを狭くする方法
海外FXでもスプレッドを狭くする方法がいくつかあります。
- スプレッドが最狭レベルの海外FX業者に変える
- プロ口座・VIP口座などスプレッドが狭い口座に変える
- トレード手法を中長期に変える
- 手数料有料のECN口座を利用する
上記の方法の中でも、手数料有料のECN口座を利用する方法が短期トレーダーにはおすすめです。
海外FXでスプレッドが広いと感じた時の対策をこちらの記事で解説してます。合わせて参考にして下さい。
ECN口座とは
ECN口座とは
ECN口座のイメージ
スプレッドが狭くなる
ECN口座なら世界中の市場参加者同士で取引が可能となるため、希望する価格・有利な価格で約定しやすくなるのが大きなメリットです。通常の取引で上乗せされている海外FX業者への手数料も別途で課金されるため、スプレッドが数段狭くなります。
手数料がかかる
ただし、ECN口座の場合は通常だとスプレッドに上乗せされている海外FX業者への手数料が、別途で課金される仕組みになっています。
ECN口座は手数料を払ってもおすすめ?
いくら海外FXはハイレバレッジで大きな取引ができるとしても、いくら透明度が高いNDD方式だとしても、広いスプレッドでは短期トレードの場合なかなか思うように結果が出ないといえます。
とくにスキャルピングの場合は、ほんの数秒~数分での取引となりますのでスプレッドが広すぎてしまうと、やっと±ゼロの地点にきたとしても、その時にはすでに相場の流れが変わり始めているわけです。非常に効率が悪いです。
そこで、実際に通常のSTP口座とECN口座では、トレードコスト的にどうなのかを検証していきたいと思います。
トレードコスト
人の心理として、スプレッドに暗に上乗せされた手数料は「仕方がない」と思える反面、「手数料」という項目で別途で課金されてしまうとなぜか拒否反応を起こしてしまいます。
おそらく心理的なもので、それがスプレッドなら許せるけれど、手数料なら払いたくない、となってしまうのが普通です。
STP口座も結局は手数料を払っている
ここでよく考えておきたいのは、結局はSTP口座でも手数料をしっかり払っているということです。STP口座とECN口座の違いは、約定価格に手数料が反映されるかどうかの違いです。
STP口座は手数料込みのスプレッドとなっているため、手数料は名目上は無料ですが、約定した時点で手数料分の損失額がポジションに反映されています。不利なポジションからのスタートとなるにもかかわらず、ひとまずは「手数料無料」の取引をしたということで納得してしまいます。
ECN口座は手数料とポジションは完全に分離されています。有利なポジションでスタートできるかわりに、別の欄に手数料という項目が加わり残高が少なくなっています。確かに別途で手数料はかかるのですが、有利なポジションにて利益が出しやすくなります。
結局手数料を払うのであれば、有利な方がよい
STP口座にしてもECN口座にしても、いずれにしても手数料を払っているのであれば、取引に有利な方がいいですよね。利益が出ればECN口座で払った手数料の分は相殺できます。「手数料」を別途で払ったとしても結果的に稼げるのであれば気にならなくなります。
- 「手数料無料」だけどトレードコストがかかる → 不利なポジション → 稼ぎづらい
- 「手数料有料」だけどトレードコストがかからない → 有利なポジション → 稼ぎやすい
しかし、スキャルピングやデイトレードはほんの短い時間での相場動向が勝負となり、タイミングを逃せば稼ぎ損ねてしまいます。短期トレードでは後者②を選んだ方が賢明だといえるのです。
トレードコストの計算方法
では、実際にSTP口座とECN口座でどれくらいのトレードコストがかかるのか、計算方法・シュミレーションの仕方を解説していきます。
pipsを円に換算する
まず最初にpipsを円に換算するといくらになるのか確認しておきましょう。
- 0.1pips → 0.1銭
- 1pips → 1銭
- 10pips → 10銭
- 100pips → 1円
- 1000pips → 10円
- 10000pips → 100円
STP口座のトレードコスト
米ドル/円の場合でSTP口座の平均スプレッドは1.2pips~1.6pipsあたりです。
1.2pipsで計算
少なめに見積もって「1.2pips = 1.2銭」のスプレッドでかかるコストは
- 1,000通貨 × 1.2pips = 12円
- 10,000通貨 × 1.2pips = 120円
- 100,000通貨 × 1.2pips = 1,200円
- 1,000,000通貨 × 1.2pips = 12,000円
以上のようになります。
ECN口座のトレードコスト
米ドル/円のECN口座の平均スプレッドは0.3~0.6pipsあたりです。
0.5PIPSで計算
少し広めだったとして「0.5pips = 0.5銭」で計算すると
- 1,000通貨 × 0.5pips = 5円
- 10,000通貨 × 0.5pips = 50円
- 100,000通貨 × 0.5pips = 500円
- 1,000,000通貨 × 0.5pips = 5,000円
スプレッドのコストは以上のように半額以下になります。
手数料を計算
ECN口座では手数料が片道3ドル~5ドル/1Lotがかかりますので、片道3ドルで手数料の分を計算します。
- 1,000通貨 → 0.03ドル(3円程度)
- 10,000通貨 → 0.3ドル(30円程度)
- 100,000通貨 → 3ドル(300円程度)
- 1,000,000通貨 → 30ドル(3,000円程度)
ECN口座のトータルのトレードコスト
スプレッドのコストと手数料を足した、ECN口座のトータルのコストは以下のようになります。
- 1,000通貨 → 8円(STP/12円)
- 10,000通貨 → 80円(STP/120円)
- 100,000通貨 → 800円(STP/1,200円)
- 1,000,000通貨 → 8,000円(STP/12,000円)
というように、手数料を払ったとしても断然ECN口座の方が割安なのです。
おすすめECN口座
海外FX業者によって同じECN口座でも、スプレッドや手数料に差が出てきます。最後に、おすすめのECN口座を3社ご紹介しておきましょう。
LAND-FX
米ドル/円の平均スプレッド → 0.1~0.4pips
ECN口座:ECN口座
特徴
LAND-FXは世界最大の大手金融インフラEQUNIX社のデータセンターを確保。加えて、東京にもサーバーを確保していることから、業界トップクラスの最狭スプレッドと高い約定力を提供しています。
スプレッドを重視するなら、迷わずおすすめできる海外FX会社です。設立20008年と実績も長く、良質なトレード環境・サービスにて国内でも高く評価されています。
手数料・その他
片道3.0ドル/ 1Lot
- 最低入金額:1,000ドル
- 最低取引通貨数:1,000通貨
- レバレッジ:最大1000倍
スプレッド 公開データ
LAND-FXではスタンダード口座・PRIME口座(STP)とECN口座(ECN)の3つの口座があり、STP口座でも海外FXではトップクラスの最狭スプレッドを誇っています。
通貨ペア | スタンダード口座 | ECN口座 |
---|---|---|
USDJPY(米ドル/円) | 1.20pips | 0.29pips |
EURUSD(ユーロ/米ドル) | 1.00pips | 0.10ips |
EURJPY(ユーロ/円) | 1.40pips | 0.30pips |
GBPUSD(英ポンド/米ドル) | 1.20pips | 0.40pips |
AUDUSD(豪ドル/米ドル) | 1.30pips | 0.31pips |
EURGBP(ユーロ/英ポンド) | 1.53pips | 0.53pips |
ZARJPY(南アランド/円) | 1.44pips | 0.44pips |
AXIORY ナノ口座
米ドル/円の平均スプレッド → 0.3~0.8pips
ECN口座:ナノ口座
特徴
スプレッドの狭さならAXIORYも見過ごせない海外FX会社の1つです。大手金融インフラEQUINIX社のデータセンター、提携LP数の数も多く約定率は99.99%を実現しています。
公式サイトでもリアルタイムスプレッドや約定率の実測データを公開しています。運営実績があり信託保全も用意、サービスの透明度が高く信頼できる海外FX会社として定評があります。
手数料・その他
片道3ドル/1Lot
- 最低入金額:200ドル以上
- 最低取引通貨数:1,000通貨
- レバレッジ:最大400倍
スプレッド 公開データ
AXIORYではスタンダード口座(STP)とナノ口座(ECN)と2つの口座があります。スタンダード口座でも
通貨ペア | スタンダード口座 | ナノ口座 |
---|---|---|
USDJPY(米ドル/円) | 1.4pips | 0.4pips |
EURUSD(ユーロ/米ドル) | 1.1pips | 0.1pips |
GBPJPY(英ポンド/円) | 2.1pips | 1.0pips |
EURJPY(ユーロ/円) | 1.4pips | 0.4pips |
GBPUSD(英ポンド/米ドル) | 1.1pips | 0.2pips |
USDCAD(米ドル/カナダドル) | 2.1pips | 0.9pips |
AUDNZD(豪ドル/NZドル) | 2.4pips | 1.3pips |
TRADEVIEW
米ドル/円の平均スプレッド → 0.1~0.3pips
ECN口座:ILC口座
特徴
TRADEVIEWは国内での知名度はまだそこまで高くないのですが、スプレッド重視の上級者から人気がある海外FX会社です。EQUINIX社のデータセンターと50社以上の大手LPを確保していることが強みです。
サービスの質は高いものの、口座や取引ツールの種類が多く若干わかりづらいことや、日本語サポートがあまり充実していないことが気になる点です。簡単な英語がわかる方や海外FXの経験者におすすめです。
手数料・その他
片道2.5ドル/1Lot
- 最低入金額:1,000ドル
- 最低取引通貨数:100,000通貨
- レバレッジ:最大100倍
スプレッド 公開データ
Tradeviewの口座は取引ツールやレバレッジなどによって5つの口座から選択できます。代表的な口座は、xLeverage口座(STP)、ILC口座(ECN)があります。ECN口座のリアルタイムスプレッドが公式サイトにて公開されています。
通貨ペア | リアルタイムスプレッド |
---|---|
USDJPY(米ドル/円) | 0.1pips |
EURUSD(ユーロ/米ドル) | 0.4pips |
GBPUSD(英ポンド/米ドル) | 0.6pips |
EURJPY(ユーロ/円) | 0.6pips |
AUDUSD(豪ドル/米ドル) | 0.3pips |
USDCAD(米ドル/カナダドル) | 0.7pips |
EURGBP(ユーロ/英ポンド) | 0.5pips |
以下の記事では、海外FXのスプレッド比較のコツを解説しています。ECN口座選びの参考にしてみて下さい。
まとめ
今回は、手数料有料の海外FX口座、スプレッドが狭いECN口座について解説していきました。
ECN口座は手数料が別途で課金されてしまうため、慣れない方は敬遠しがちです。しかし、通常の海外FX口座、STP口座の場合は手数料が無料でもスプレッドに手数料が上乗せされていることがわかりました。
トータルのトレードコストは具体的に計算してみれば、ECN口座の方が結局は割安になります。ECN口座なら狭いスプレッドにて短期トレードで有利なポジションが持ちやすいことに加え、経費計上して節税につなげることも可能です。