海外FXの税金は申告しなくてもばれない!?脱税はNG、海外FXの税金無申告のリスク

FXで得た利益は一定額を超えると確定申告をして税金を払わなければなりません。海外FXも例外ではなく、日本の居住者である限り税金を払う義務が生じます。海外FXなら申告しなくてもばれないのではないかと思ってしまう投資家は少なくないようです。できれば払わずに済ませたい税金ですが、申告漏れはどこかのタイミングで必ずばれます。

申告漏れ、いわゆる脱税は法律違反となり罰金が課せられ本来の税金よりも多くの金額を払う羽目になります。最悪の場合は懲役が課されるケースもあるのです。海外FXの脱税はリスクが高すぎて危険です。

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今回は、海外FXの税金無申告のリスクや、海外FXの利益がなぜ税務署にわかってしまうのかその仕組みを解説していきます。海外FXで一定額の利益が出たらきちんと申告するよう心がけましょう。

海外FXの脱税はばれる

海外FXの脱税はばれる

国内に居住している個人や拠点を持つ法人は、原則として納税する義務があります。海外FXは海外の業者を利用しますので、申告しなくてもばれないのではないかと期待する投資家もいるようです。しかし、海外の業者を利用していても利益があることは調べればすぐにわかってしまいます。

税金は重要な国の財源となりますので、税務署は個人や法人が正しく税金の申告を行っているかどうかを税務調査しています。

税務調査とは

税務調査とは

税務調査とは

税務署が納税者に対して、過少申告や申告漏れがないか申告書や帳簿、金融機関の取引履歴などで支出の明細を確認する調査のことです。

税務調査には、「任意調査」と「強制調査」の2種類があります。

任意調査

任意調査とは軽度~中度の税務調査のことで、税務署が疑問を持った時に確認を兼ねて調査を任意で行うことです。事前に連絡があり、調査の日程を相談して決めることができます。任意とはいっても、税務署には調べる権限がありますので断ったり黙秘権を使ったりするとトラブルになります。一般的には調査に応じることを前提に応対します。

任意調査にて過少申告や申告漏れがわかった場合は、不足分の税金や罰金が課されます。必ずしも脱税の疑いがあるというわけではなく、不明点や疑問点を再確認するだけなどカジュアルな任意調査もあります。

強制調査

強制調査

強制調査とは「マルサ」と呼ばれている踏み込み調査のことです。マルサとは脱税調査専門の国税局査察部の隠語です。これは、億単位の巨額な脱税や悪質な犯罪がらみの脱税の疑いが強い(ほぼ確定している)時に行われるものです。基本的に1憶を超える脱税が対象となり、通常は一般の個人投資家が強制調査を受けることはありません。

強制調査は裁判所の令状を得て行われ、数人~数十人の捜査官によって書類や帳簿、パソコンのデータなどを徹底的に調べられます。事前に調査を知らせると証拠が隠蔽されてしまうので抜き打ちで突然やってきます。脱税が確認されると検察庁に告発されて刑事事件として取り扱われます。

過去にさかのぼって調べられる

一旦、税務署の疑惑が強まった場合は、過去にさかのぼって申告に偽りがないか調べられてしまいます。

国税通則方では、通常の税務調査にて5年前まで調べる権限があり、5年間分の税金や罰金が課すことができるとしています。最初は3年分の調査が行われるのが一般的で、3年間に申告漏れや過少申告が多発している場合は5年間にさかのぼるとのことです。

悪質だと判断された場合は、最大で7年分の税務調査が行われます。

海外FXの税金は申告しましょう

海外FXの税金にて、個人投資家が強制調査に合う可能性は低いものの、ちょっと疑惑を持たれて任意調査の連絡がくるのは十分にあり得ることです。

海外FXの税金を払わずに仮に1,2年はばれなかったとしても、ある日何かのきっかけで数年分調べられたとしたら、多額の税金と罰金が一度に請求されてしまうのです。とても恐ろしいですよね。

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税金が国民の義務である以上は、節税に力を入れつつ真面目に払っておく方が結果的に安く済むのです。海外FXなら・・・と期待を持っている投資家の方もきちんと申告するようにしましょう。

海外なのにどうしてばれるのか?

海外なのにどうしてばれるのか?

海外FXの税金を調べている中で、なぜ海外の業者を利用しているのばれてしまうのか不思議に思う方もいるでしょう。

man
出金した金額を日本の銀行口座で受け取られなければばれないのでは?
man
海外FX口座から出金しなければいいんじゃない?
man
100万円以下なら調べられることはないって聞いたけど・・・

と色々な説があります。

日本の金融機関の場合、海外送金の手続きをしたり、海外からの入金があった場合は特別に書類を税務署に提出することが義務づけられています。日本から海外へ送金、海外から日本へ送金する際には金融機関の利用なしで行うことは不可能です。

海外FX業者にて入出金した履歴が金融機関のデータに残ってしまいます。
teacher
海外の銀行口座を利用したとしても、結局は日本の金融機関を介して出金しなければ利用できませんのでどこかで分かってしまいます。

また、海外FX口座に預け入れている状態でも利益が出ている場合は所得と見なされるため、出金しなければいいというわけではないのです。それに、そもそも出金しなければ海外FXでトレードをする意味がありませんよね。

100万円以下の少額出金なら目立たないので調べられない、との声も聞かれていますが、2、30万の海外からの出金でも回数が重なると疑惑を持たれてしまいます。

teacher
海外FXでばれない方法はありません。ほぼ100%どこかのタイミングで必ずばれると思っておいた方がよいでしょう。ここでは、海外FXの脱税がばれてしまう仕組みを詳しく解説していきます。

金融機関が提出する「国外送金等調書」

国内の金融機関では海外への送金、海外からの入金があった際には「国外送金等調書」を税務署に提出することが義務づけられています。

  • 100万円以上の海外への送金
  • 100万円以上の海外からの入金
金融機関が提出する「国外送金等調書」

国外送金等調書には、日付、送金者名や受領者名、利用した口座、金額などがすべて記載されているため、税務署はこの調書を見ることで海外FXでまとまった金額が出金されればすぐにわかってしまいます。

国外送金等調書に記載されている項目
  • 送金者、受領者の氏名・住所
  • 年月日
  • 相手国
  • 口座の種類、口座番号
  • 送金、受領の金額
  • 送金原因(目的、理由)

国外送金等調書が提出されるのは100万円以上からとなるので、100万円を超えない金額なら入出金があってもばれないと思いがちです。しかし、調書が提出されなかったとしても、クレジットカードや口座履歴を調べれば、海外FX業者の利用があることがばれるのです。

金融機関は最低7年間は顧客の取引履歴を保存しおくことが義務づけられています。さらに税務署からの要請があった時には保存しているデータをすべて開示しなければなりません。
teacher
いつ、どこで、いくら、誰に払ったのか、誰から受け取ったのか、税務署に隠すことは不可能なのです。

租税条約

国税庁が調査できるのは国内の金融機関だけではありません。

海外の金融機関においても日本人口座のデータを取得・調査することが可能なのです。

日本はOECD加盟国を中心とした139か国(地域)との間で「租税条約」を締結しています。

OECD加盟国とは

各国の経済成長・経済発展に貢献し、多角的で無差別な世界貿易の拡大を図るために設立された国際機構です。欧州、米国、英国、日本、カナダ、オーストラリアなど先進国を筆頭に構成されています。

参照:OECD OECDについて

租税条約とは

租税条約は、二重課税や脱税・租税回避の対策として二国間で健全な課税関係の安定を図るために制定された条約です。

参照:財務省 租税条約の概要

租税条約の主な内容
  • 課税関係の安定・二重課税の除去

→ 所得が発生する国が課税できる所得の範囲の確定、国外所得免除方式または外国税額控除方式の導入など

  • 脱税およびに租税回避等への対応

→ 税務当局間の納税者情報・銀行口座情報の交換、滞納租税に関する徴収の相互支援

つまり、租税条約を提携している国との間では、金融機関などの利用履歴・口座情報が税務局同士でやり取りされているわけです。定期的に情報の交換が行われると同時に、要請があった時には他国の税務局が金融機関に介入して調べることが可能なのです。

租税条約のネットワーク

2020年7月時点で、日本が租税条約を提携している国・地域は139か国に及びます。

租税条約のネットワーク

https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/

海外FX業者の拠点で多い国

  • 香港
  • セントビンセント・グレナディーン諸島
  • ケイマン諸島
  • イギリス領ヴァージン諸島
  • バミューダ
  • マルタ
  • キプロス

なども含まれています。

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ということは、海外FX業者が利用する金融機関のデータを入手することが可能だということです。

かつては、タックスヘイブンとしてオフショア系の国は多くのの企業や資産家に利用されていました。しかし、パナマ文書などで租税回避が国際的な問題となり、今ではほとんどのタックスヘイブン国が租税条約を提携しているのです。

すべての情報を国税庁が常に調査しているとはいいきれませんが、何かのきっかけで調べられてしまえば、最大で7年間分の過少申告や申告漏れがわかってしまうのです。

租税条約の3つのシステム

租税条約の3つのシステム

https://www.nta.go.jp/taxes/

租税条約は大きく3つのシステムによって情報交換がなされています。

  1. 要請に基づく情報交換
  2. 自発的情報交換
  3. 自動的情報交換
1.要請に基づく情報交換

申告状況に疑問がある場合に国税庁は必要な情報収集・開示を提携している国の税務局に要請できます。

2.自発的情報交換

自国において各国の納税者の情報が有益だと判断された場合、提携している国に自発的に提供しています。

3.自動的情報交換

自国での非居住者の入出金の履歴等を自動的に一括して送付するシステムのことです。

2018年度は、国税庁が「要請に基づく情報交換」で他国に要請した件数は137件、「自発的情報交換」で受け取った情報は574件、「自動的情報交換」で受け取った情報は705件もあるのです。

参照:PwC Legal Japan News 租税条約に基づく情報交換要請の違法性

脱税がばれるとどうなる?

脱税がばれるとどうなる?

では実際に脱税がばれた場合にどうなるのか、ペナルティの一覧表を見ておきましょう。

税金のペナルティ

ペナルティの種類 原因 罰金
過少申告加算税 納付すべき税額が過少だった場合 税額の10%~15%
無申告加算税 課税対象となる所得を申告しなかった場合 未納税の税額に加えて税額の15%
不納付加算税 源泉徴収を行った税額を納付しなかった場合 未納税の税額に加えて税額の10%
重加算税 悪質な隠蔽、仮装申告だと見なされた場合 未納税の税額に加えて税額の35~40%
延滞税 期限に間に合わなかった場合 未納税額の年利7.3%~14.6%
利子税 延納を申し出ている場合 未納税額の7.3%

過少申告や申告漏れには、以上のようなペナルティが課されて本来払うべき税金よりも多くの税金を払う羽目になるのです。

悪質な隠蔽、仮装申告だと見なされた場合、罰金に加えて10年以下の懲役が課されるケースもあります。

FX脱税のペナルティ事例

FX脱税のペナルティ事例

FXの脱税にて実際にあったペナルティ事例を見ておきましょう。

元手100万円!FX自動売買で1憶4,000万円を脱税

シンガポールに移住した後でFX所得の脱税が発覚したケースです。FXで得た所得は3憶6,800万円。謝礼を払って知人名義の口座を開設、複数のFX口座で稼いだ金額は海外の銀行口座に送金していたとのことです。日本に居住していた期間での所得だったため、移住後に名古屋国税局の強制調査にて脱税が判明しました。

突然マルサが!有名個人トレーダーの1憶6,000万円の脱税

FX億り人として一躍マスコミでも有名になった個人トレーダーが脱税していたことが発覚したケースです。当時は六本木ヒルズに住まいを移すなど、億万長者として騒がれていました。しかし、リーマンショックで10憶円を超えていた資産は数千万円に激減していた、ちょうどその時にマルサが突然やってきて過去の脱税を摘発されたとのことです。ペナルティの総額は3憶3,000万円。数年かけて借金を返済する日々に一転してしまったのです。

無申告4憶円の主婦!5憶円のペナルティを即金で支払う

こちらは世田谷区の主婦が約3年間で得たFX所得4憶円の脱税が発覚しました。数年前に親から相続した資産をもとに、数千万円の運用資金にて数億円に増やしたとのことです。罰金に加えて懲役1年6か月の判決となりました。ペナルティ総額5憶円を即現金で払った主婦のFX脱税で有名になった池辺雪子さん。その後、本を出版したりFXセミナーの講師をしたり、自身のオフィシャルWEBサイトを開設したりと活躍されている異例のケースです。

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強制調査を受けるほど稼げるのは羨ましい話でもありますが、上記のように過去の脱税がある日突然発覚してしまう可能性はあるという事例です。海外FXだからと油断は禁物。数年分のペナルティによって借金を抱えてしまうかもしれないのです。海外FXで一定額の利益が出た時には、きちんと申告して税金を払っておいた方が身のためです。

海外FXの確定申告

海外FXの確定申告

それでは最後に海外FXの確定申告の概要をお伝えしておきましょう。

確定申告の概要

確定申告の期間

確定申告の期間は毎年2月中旬~3月中旬あたりの約1か月間です。時間に余裕をもって早めに準備するようにしましょう。

海外FXで確定申告が必要な人

海外FXで税金が発生するのは

  • 給与所得者 → 20万円以上
  • 給与所得者以外 → 48万円以上

上記の金額を超える海外FX所得がある場合です。

海外FX所得 = 海外FXの利益 - 必要経費
税金の計算方法

海外FXの場合は、給与所得、事業所得などのその他の所得との合計から控除額を差し引いた課税所得額がいくらなのかによって税率が決まります。

課税所得額 = 給与所得(事業所得) + 海外FX所得(その他雑所得) - 控除額
所得税 = (課税所得額 × 所得税の累進課税)- 控除額
復興特別所得税 = 所得税 × 2.1%

住民税 = (課税所得額 × 10%)+ 均等割り - 調整控除※住民税の計算は各都道府県・市区町村によって若干異なります。

申告の手順
  1. 海外FXで申告が必要か確認する
  2. 申告書、源泉徴収票など必要書類を用意する
  3. 申告書を作成する
  4. 確定申告を提出する
  5. 納税する

以上の流れで確定申告を進めていきます。

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国税庁では、e-Taxというオンラインの確定申告サイトを設けています。書類の作成から提出までオンラインで手続きが可能です。詳しくは以下の記事にて、e-Taxを使った確定申告のやり方を解説しています。どうぞ参考にして下さい。

まとめ

まとめ

今回は海外FXの脱税はNGだということ、そして税金の過少申告・無申告のリスクについて詳しく解説していきました。

海外FXに限らず脱税は必ずばれると思っておいた方が間違えありません。いざばれた時のリスクは非常に高いことを理解しておきましょう。海外FXの脱税に労力をかけるよりは、税金が気にならないくらいに大きく稼げるようになる、あるいは節税することに努力した方が生産性は数段高くなるといえます。

海外FXの税率は利益が大きくなるにつれ最大で45%です。住民税を入れると半分以上が税金で取られてしまいます。安定して大きな利益が出せるようになったら、どこかのタイミングで法人化を検討するのも1つの方法です。法人税に切り替えれば税制の優遇も多くなり、手元に残る金額も増えます。

teacher
まずは、誰にでもできる節税方法として必要経費を徹底して計上していく方法があります。必要経費金額が増えれば課税所得額が小さくなるため、支払う税金を抑えることが可能です。どんなものが必要経費にできるのか、この機会にしっかり調べておくようにしましょう。

ちなみに以下の記事では、海外FXの節税方法につい詳しく解説しています。合わせて参考にして下さい。

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ABOUTこの記事をかいた人

個人投資家、ライター、アナリスト。海外メディアを駆使した市場リサーチが強み。副業トレーダーを経て、フリーランスとして独立。 株式投資、FX、金プラチナ、債券、外貨預金、ETF・投資信託、不動産などの分散投資を得意とする。