海外FXの損失の確定申告方法

海外FXの税金は、国内FXとは税金の種類が異なるため、基本的に損失の繰越や損益通算はできません。従って、会社員などで給与がすでに源泉徴収されている場合は、損失をわざわざ確定申告する必要はないのですが、状況によっては損失を確定申告した方がよいケースもあります。

まず、完全に損失を申告する意味がないケースは、もともと海外FX以外で確定申告の必要がない方。

確定申告をした方がいいかもしれない方とは、雑所得が他にもあって、海外FXにかかわらずいずれにしても確定申告をしなければならない方。あるいは、専業トレーダーで海外FXを事業所得としている方。

なぜ、雑所得が他にある場合や、事業所得としている場合は、海外FXの損失を申告した方がよいのか疑問に思いますよね。

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今回は、海外FXの損失を確定申告した方が良いケース、その理由や判断方法確定申告の方法を詳しく解説していきます。自分の場合はどうなのか、ぜひ参考にして下さい。

海外FXの損失は確定申告する?

海外FXの損失は確定申告する?

海外FXの損失を確定した方がよいかどうか判断するために、最初に海外FXの税金の種類や仕組みを確認しておきましょう。

海外FXの税金

国内FXの税金 海外FXの税金
課税対象 給与所得者は海外FX所得が20万円以上
給与所得者以外は総所得が48万円以上
給与所得者は海外FX所得が20万円以上
給与所得者以外は総所得が48万円以上
所得区分 総合課税の雑所得 先物取引にかかる雑所得
課税方式 累進課税 分離課税
税率 総所得によって税率が5~45% 一律で20.315%
住民税 所得額の10% 所得額の5%(20.315%に込み)
損失の繰り越し できない できる
海外FX所得 = 海外FXの利益 - 海外FXの必要経費
海外FXで税金が発生するのは

会社員、フリーターなど給与所得がある場合で海外FX所得が20万円以上です。一般的に給与所得はすでに源泉徴収されているため、海外FX所得が20万円以下なら確定申告の必要がありません。

個人事業主や学生・主婦、専業トレーダーなど給与所得がない場合だと、海外FXを含めた総所得が48万円以上になると税金が発生します。

海外FXの所得区分

海外FXの所得区分は、総合課税の雑所得です。国内FXの所得区分は分離課税の雑所得となるので、合算・損益通算することはできません。

国税庁「雑所得」

海外FXの税率

海外FXの税率は、累進課税の税率となりトータルの総所得額に応じて5%~45%で課されます。

年間の所得の合計が195万以下の場合は税率5%、所得が増えるごとに最大で45%の税率がかかります。

海外FXの税金計算方法

事業所得 + その他・雑所得など + 海外FX所得 = 課税所得額

課税所得額 × 税率(5~45%) - 控除額 = 所得税

住民税と復興特別所得税
  • 住民税 → 課税所得額 × 10%(地域による)
  • 復興特別所得税 → 所得税 × 2.1%

損失の繰越・損益通算について

損失の繰越・損益通算について

では、海外FXで損失が出た場合は「損失の繰越」「損益通算」は可能なのでしょうか?

結論を簡単にいうと、

  • 国内FXとの損益通算はできない
  • 損失繰越はできない
  • その他雑所得との損益通算はできる
  • 事業所得としている場合は損益繰越ができる

となります。

つまり・・・

給与所得がある方で、海外FX以外に雑所得がない方は海外FXの損失を申告する必要はない(何の意味もない)ということです。

海外FXの損益通算をした方がよいケース

海外FXの損益通算をした方がよいケースとは、

  • 海外FX以外にも総合課税の雑所得がある場合
  • 海外FXを事業所得で申告している場合

この2つのケースとなります。

損益通算が可能な雑所得とは

海外FXの損失と損益通算が可能な雑所得とは、以下の所得以外に該当する所得のことです。

利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得

これらの所得に該当しない所得が雑所得に分類されます。さらに雑所得は総合課税と分離課税に分けられていて、総合課税の雑所得であれば損益通算することが可能です。

総合課税の雑所得
  • 海外FXの
  • 仮想通貨
  • オンライン通販・ネットオークション
  • アフィリエイト
  • 印税・執筆料
  • Web製作・Webデザイン
  • 年金収入
  • 非営業用貸金の利子

など、これらの所得は損益通算することが可能なのです。

例えば・・・

仮想通貨の利益50万円 - 海外FXの損失50万円 = 雑所得ゼロ円

というように、損失額を通算することが可能です。

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確定申告が雑所得のみとなる会社員などは、損益通算によって課税対象外となることも考えられます。

事業所得がある個人事業主でも雑所得の金額が少なくなることで、トータルの課税所得額を抑えて税金を減らすことができます。

事業所得で損益通算・損益繰越し

個人投資家・専業トレーダーで海外FXの所得を事業所得としている方、かつ青色申告を行う場合は、海外FXの損益通算・損益繰越が可能です。

例えば・・・

(株式の利益50万円 + 国内FXの利益50万円) - 海外FXの損益150万円 = 事業所得-50万円

と合算してトータルの事業所得を計上します。

事業所得の-50万円は3年間に渡って繰り越すことができます。

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海外FXの損益通算の方法、損益通算できるものを以下の記事で詳しく解説しています。合わせて参考にして下さい。

損失を確定申告するメリット・デメリット

損失を確定申告するメリット・デメリット

損失だった場合は、本来なら海外FXの確定申告は必要ありません。ただ、ここまで見てきたように、それぞれの状況によっては損失を確定申告することによって節税が可能となります。

果たして、自分の場合は損失を確定申告すべきかどうか判断に悩む方も多いかもしれません。

そこで、海外FXの損失を確定申告するメリット・デメリットを見ていきたいと思います。

損失を申告するメリット

課税対象外となる可能性がある

給与所得者で雑所得が海外FX以外にある場合、海外FXの損失を確定申告することで課税対象外となる可能性があります。

その他の雑所得から、海外FX所得を差し引いた金額が20万円以下であれば税金は発生しません。

課税額を抑えることができる

海外FXの損失を確定申告することで、総所得額を抑えることができます。

総所得額が小さくなれば、それだけ支払う税金も少なくて済みます。

税率を下げることができる

海外FXの税金は総合課税で計算しますので、損失額によっては税率をワンランク下げれるかもしれません。

総合課税の税率は5%、10%、20%、23%、33%、40%、45%と7段階あります。10%から5%、20%から10%に税率が下がれば税金は半分になります。

損失額で所得額を抑えることで、税率自体も変わってくるのです。

事業所得なら青色申告すれば繰越できる

海外FXを事業所得としている方は、青色申告にすれば損益通算だけでなく損益繰越しも可能となります。

3年間の繰越ができますので、やり方次第では3年間は支払う税金が少なくなります。
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というように、損失が出てしまった落ち込んでいる方は多いと思いますが、その損失額によって思いがけず得することもあるのです。損失で受けたダメージは無駄ではなかったということです。

損失を申告するデメリット

手間が増える

損失の申告は義務ではありませんので、申告せずに済ませた方が事務的な作業は少なくて済みます。わざわざ損失分を申告するために、手間が増えることがデメリットです。

節税効果があまり期待できないほどの損失であれば、申告しなくてもよいでしょう。

税金の仕組みを知らないと若干ややこしい

一般的に、海外FXの損益通算は総合課税の雑所得のみが対象となります。そもそも雑所得とは、総合課税とは、といった仕組みから学ぶ必要があり最初はややこしく感じるかもしれません。

海外FXの税金の仕組みが一旦わかっておけば、今後も役に立ちます。

海外FXの損失を確定申告する方法

海外FXの損失を確定申告する方法

それでは、海外FXの損失を確定する方法を解説していきます。

1.損益通算できるかどうかを確認

まず、海外FXで損失が他の所得との損益通算可能かどうかを確認します。海外FX以外の雑所得(総合課税)が他にもあれば損益通算できます。

その他の雑所得があって、損益通算できることがわかっている場合は、節税が期待できるほどの損失額なのかも吟味してみましょう。

2.雑所得をすべて合算して損益通算を行う

雑所得A + 雑所得B + 雑所得C - 海外FX損失 = 雑所得の合計

雑所得に該当するものを合算、海外FXの損失額を差し引いて雑所得の合計金額を出します。

3.給与所得や事業所得など総所得額を計算

給与所得 + 雑所得 + 不動産所得 = 総所得額

給与所得、事業所得、不動産所得、譲渡所得、利子所得、配当所得、一時所得、雑所得は一部の所得を除いて総合課税となりますので、すべての所得を合算します。

雑所得は給与所得や事業所得とは合算できないため注意して下さい。

4.税額を計算する

国税庁のページから税率・控除額を調べて、税金の計算をします。

所得額 × 税率(5%~45%)- 源泉徴収済の税額・各種控除額 = 所得税

給与所得がある場合は源泉徴収済の税額、基礎控除や医療控除、扶養控除などその他控除額を差し引いて、所得税を算出します。

※住民税、復興特別所得税も別途算出

確定申告の計算方法はこちらから

5.必要書類を用意する

6.確定申告書を作成する

所得額が把握できたら、確定申告書を作成します。オンラインで作成して提出できる国税庁の「e-Tax」がおすすめです。

確定申告の情報サイト

などから確定申告の情報が確認できます。

書類の作成のみをオンラインにして、提出は郵送で行うこともできます。すべて手書きで作成したい方は、確定申告書を印刷・ダウンロードすることも可能ですので、各自でやりやすい方法を選んで下さい。

雑所得の損益額を書く欄

申告書B 第一表

給与所得や事業所得を記入したら、緑色の項目にある「雑 その他」の欄に損益通算後の雑所得の総額を記入します。

申告書B 第2表

次に、第2表の雑所得の欄に、所得別に詳細を記入します。この枠内に海外FXの損失額を記入します。

後は、それぞれの所得項目に応じて必要な欄をすべて埋めて、所得税の欄が完了したら住民税・復興特別所得税の欄を記入します。

7.  確定申告書を提出・納税

郵送または、e-Taxで申告書を期限までに提出します。

申告書を提出したら、忘れてはいけないのが期限内に税金を払う必要があることです。

納税方法

納税方法は、以下の方法から選択できます。

  1. ダイレクト納付(口座振替)
  2. インターネットバンキング
  3. クレジットカード納付
  4. コンビニQRコード納付
  5. コンビニバーコード納付
  6. 振替納付(毎年振替手続き)
  7. 窓口納付(税務署・金融機関の窓口)

一番簡単で速いのがクレジットカードです。

国税庁指定の「クレジットカードお支払いサイト」がありますので、こちらにアクセスしてクレジットカードで支払うことができます。

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納税まで無事に終わったら、確定申告が完了です。

損失計上のコツ・注意点

損失計上のコツ・注意点

最後に海外FXの損失を計上するコツ・注意点をまとめておきました。

損失を上手に活用しよう!

含み損が拡大した時や損失が確定した時は、トレードに自信を失くし落ち込んでしまう方も多いでしょう。しかし、ちょっと視点を変えれば節税に有効に活用することができるのです。

あえて損切りする

年末近くになってきたら、拡大している含み損がないかチェックしてみましょう。損益通算用に、含み損を思い切って決済しておくのも1つの方法です。そのポジションにこだわりがあれば、すぐにまたポジションを持ち直すことができますよね。

あるいは、もっと価格が下がるのを狙うこともできます。つねに、いざとなったら損失額が計上できるよう複数のポジションを持っておく投資家もいます。

両建てで損失をつくる

この方法は中級者以上の方におすすめなのですが、年末近くにわざと両建てにて損失額を作っておく方法です。両建ての場合、必ずどちらかのポジションで損失が出ますので、損失が出ている方のみ決済します。

利益が出ている方は、そのまま保有または年明けに決済することでプラスマイナスゼロとすることが可能です。

※ただし、年末年始の急激な為替変動で損失が出るリスクがあるので注意して下さい。

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両建て手法について詳しく知りたい方は以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ、こちらも参考にしてみて下さい。

損益通算できない所得があるので注意

海外FXの損失を損益通算する時は、その所得が「総合課税の雑所得」であることを確認するようにして下さい。

雑所得にも色々な種類があって、最も代表的な総合課税以外の雑所得が国内FXです。

  • 国内FX → 申告分離課税の雑所得
  • 国内商品先物 → 申告分離課税の雑所得
  • デリバティブ・オプション → 申告分離課税の雑所得
  • カバーワラント → 申告分離課税

国税庁「先物取引にかかる雑所得等の課税の特例」

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なお、海外FXの損益通算について、もっと詳しく知りたい方はこちらの記事も合わせてご覧下さい。

まとめ

まとめ

海外FXで損失が出た時は、原則として確定申告の必要はありません。

ただ、今回ご紹介したように、その他の雑所得がある方や海外FX所得を事業所得としている方は、損失額を節税に活用することが可能です。

まず、「海外FX以外の雑所得がない」方は海外FXの損失額を申告しても、何の効果もありません。「海外FX以外の雑所得」がある方は、損失額を有効に節税対策として使うことができます。または、海外FXを事業所得としている方は、青色申告によって損益通算プラス損益繰越しが可能となります。

損益通算によって、結果的に税額にて損失分の金額が相殺できますので、損失が出た時こそ確定申告で活用できるチャンスです。落ち込むよりも喜んで下さい。
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落ち込みがちな損失も無駄ではなかったと思えることもあるのです。損失を上手に活用して、少しでも税金を安くしていきましょう!

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ABOUTこの記事をかいた人

個人投資家、ライター、アナリスト。海外メディアを駆使した市場リサーチが強み。副業トレーダーを経て、フリーランスとして独立。 株式投資、FX、金プラチナ、債券、外貨預金、ETF・投資信託、不動産などの分散投資を得意とする。