海外FXの税金計算。計算方法を例を挙げながらやさしく解説

海外FXの税金を計算する時には、国内FXとは所得区分や税率が異なるので注意しなければなりません。海外FXは総合課税の雑所得となり、給与などの所得と合わせて計算します。

海外FXにかかる税金は、海外FXの利益を含めた総所得額に応じて累進課税の税率が適用されます。会社員だったり、副業の収入があったり、フリーランスだったりと、それぞれの状況によって税金の計算方法も異なってきます。いざ計算しようと思った時に、自分の場合はどうなのか戸惑うことも多いですよね。

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今回は、海外FXの税金を計算する方法を例を挙げながらやさしく解説していきます。

海外FXに税金はかかる?

海外FXに税金はかかる?

海外FXでも利益が出たら税金がかかります

必要経費を差し引いた海外FXの利益が一定以上ある方は、各自で確定申告をする必要があります。

海外FXの場合は、海外の業者を利用するためマイナンバーの登録もないのが一般的です。そのため、海外FXの税金は払わなくてもバレないのでは?と思ってしまう方もいるでしょう。しかし、国税庁は国内の金融機関の入出金情報をすべて過去にさかのぼって調べることができます。

海外FXの税金はきちんと申告しましょう

とくに海外への出金、海外から入金があった場合、金融機関は特別に書類を国税庁に提出しなければなりません。海外FXの利用があればすぐにわかってしまうのです。また、日本は租税条約やCRSによって、海外の金融機関から日本人の利用データを入手することができるのです。

たまたま1回程度の申告漏れはばれなかったとしても、どこかのタイミングで海外FXの税金を払っていないことがバレてしまいます。

申告漏れがバレてしまえば、ペナルティーが課されるため、過去の申告漏れの分の税金と合わせて罰金を追加で払わなければなりません。1年分の税金でも結構な負担だといえるのに、数年分請求されてしまっては大変です。

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税金の計算はややこしくて厄介であることは否めませんが、結局のところ毎年真面目に申告しておいた方が経済的なのです。

課税対象となるのはいくらから?

海外FXで確定申告が必要となるのは、

  • 給与所得者 → 海外FXを含めた雑所得が20万円以上
  • 給与所得者以外 → 海外FXを含めた総所得が48万円以上

となります。

ここでいう海外FXの利益とは、必要経費を差し引いた「海外FXの課税所得額」のことです。

海外FXの利益 - 必要経費 = 海外FXの課税所得額

給与所得者 雑所得が20万円以上

会社員、派遣社員、フリーター、パート、アルバイト

など、給与をもらっている方は、海外FXの利益を含めた雑所得が20万円以上になると確定申告をして税金を払わなければなりません。

雑所得に該当するのは給与所得以外で以下のような収入のことです。

  • 短時間・単発のアルバイトの副業
  • アフィリエイト広告
  • ネットオークション
  • その他投資商品

従って、海外FXの利益が20万円に満たない場合でも、雑所得のトータルが20万円超えると納税義務が生じてしまうのです。

給与所得者以外 総所得が48万円以上

専業FX、個人事業主、フリーランス、士業、主婦、学生

など、給与をもらっていない方は、海外FXを含めた年間の総所得額が48万円を超える課税対象となります。

個人事業主やフリーランスの場合は、事業所得がすでに38万円を超えるのが普通です。海外FXの利益が少額でも税金の対象となります。

給与収入がない主婦・学生の場合は、年間の所得の総額が38万円を超えると税金を払わなければなりません。主婦・学生の方でも給与所得がある方は雑所得が20万円以上になると確定申告が必要です。

海外FXの必要経費にできるもの

海外FXの必要経費にできるものには、

  • FX関連の本、メルマガ、情報配信、サイト、ソフト
  • 経済新聞、経済月刊誌、ニュースメディアの購読料
  • FXセミナーの参加料、交通費、懇談会・食事会の費用
  • 口座開設の諸費用
  • FX取引の手数料、サーバー使用料、その他有料サービス

以上のようなものがあります。

他にも、全額を経費にできなくとも一部を経費扱いにできる支出がいくつかあります。

  • 通信費、プロバイダー料金
  • PC、タブレット、スマホなどの端末の購入費
  • FX用のPCモニター
  • 家賃・光熱費

など、プライベートの利用を兼ねているものでも、それぞれのFX取引にかける時間や所得額などによって一部を経費として計上できます。専業FXの方は間違えなく高い比率で上記の経費を計上できます。

FX用のPCモニター、PCやスマホなど、プライベート用と別で端末を購入している場合は全額経費にできます。

海外FXは何税?

海外FXは何税?

海外FXの税金の計算をスムーズに行うためには、海外FXの税金の仕組みを理解しておくことが大切です。

海外FXは雑所得にかかる所得税

海外FXも国内FXも雑所得になるのですが、雑所得の種類が異なります。ここでポイントを抑えておきましょう。

  • 海外FX → 総合課税の雑所得
  • 国内FX → 申告分離課税の雑所得(先物取引にかかる雑所得)

海外FXは総合課税の雑所得

海外FXは、総合課税の雑所得となるので、給与所得や事業所得などその他の所得と合算して税金を計算します。

ちなみに国内FXは申告分離課税の雑所得で、その他の所得と合算することができません。海外FXの利益と国内FXの利益は分けて計算する必要があるので注意して下さい。

総合課税では、トータルの所得の金額によって適用する税率が異なります。

海外FXの税率

海外FXの税率は、給与所得や事業所得などと合算した総所得額によって累進課税が適用されます。

累進税率とは

所得の金額によって税率が異なる税制のことをいいます。累進税率は、最小で5%~最大45%と所得が増えるほど税率が高くなる仕組みになっています。
海外FXの税率

https://www.nta.go.jp/taxes/

所得額が195万円以下は5%、330万円以下だと税率は10%と低めです。330万円~695万になると20%、695万円を超えると23%以上にどんどん税率が高くなっていきます。

給与所得(事業所得)+ 海外FX所得(雑所得)× 累進税率 = 所得税

復興特別所得税

所得税 × 2.1%

住民税

課税所得額 × 10%

住民税の内訳は市町村民税が6%、都道府県民税が4%です。

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確定申告では、所得税とさらに復興特別所得税が2.1%、住民税が10%を計算して申告・納税します。

海外FX 税金の計算方法

海外FXの税金を計算する方法を順序だてて見ていきましょう。

1.海外FXの所得額を計算する

海外FXの利益 - 必要経費 = 海外FX所得

2.所得の総額、控除額を計算する

総合課税の所得の合計金額を計算します。

給与所得(事業所得) + 海外FX所得 + その他雑所得= 所得の総額

さらに、必要経費や給与所得控除、社会保険料控除など控除できる金額の合計を計算します。

給与所得控除 + 必要経費 + 社会保険料控除 + 医療控除 + 扶養家族控除 = 控除額の総額

3.所得税を計算する

総所得から控除できる金額を差し引いて課税所得額を計算します。

課税所得額に累進税率を乗じた金額が所得税です。

(給与所得 + 海外FX所得 + その他雑所得)- 控除額 × 累進税率 =所得税

4.復興特別所得税を計算する

所得税 × 2.1% = 復興特別所得税

5.住民税を計算する

所得課税額 × 10% = 住民税

住民税の場合、扶養控除など控除の特例があり税額に差が生じてしまうケースがあります。所得税との格差を回避するためには、調整控除を行うことが可能です。

海外FX 税金の計算事例

海外FX 税金の計算事例

それでは具体的に税金の計算方法を事例を挙げながら解説していきます。

会社員の計算方法

会社員の方は給与所得と海外FX所得、もし、他に雑所得など総合課税の収入があれば合算して計算します。

1.海外FXの所得を計算する

海外FXの所得は

海外FXの利益 - 必要経費 = 海外FX所得 → 20万円以上の方は確定申告

100万円(海外FXの利益) - 必要経費(10万円) = 90万円(海外FX所得)

2.給与所得、その他の所得、控除を計算する

給与所得

給与の収入:520万円

ここから給与所得控除額を差し引いた金額が課税対象となる給与所得です。

520万円 - 158万円 = 362万円(給与所得)

控除額

基礎控除:38万円
扶養控除:38万円
社会保険料控除:28万円
生命保険料控除:4万円

控除額の合計:108万円

所得の合計

給与所得と海外FX所得の合計金額を計算します。

362万円 + 90万円 = 452万円(所得の合計

3.所得税を計算する

所得の合計から控除額を差し引いて、税率をかけて所得税を計算します。

課税所得額

452万円(所得の合計) - 108万円(控除額)= 344万円(課税所得額)

所得税

課税所得額が344万円の税率は20%で、所得税の控除額が42万7,500円です。

344万円  × 20% = 68万8,000円

68万8,000円 - 42万7,500円 = 26万500円(所得税)

源泉徴収で引かれている金額を差し引いた金額が確定申告の納税額です。

4.復興特別所得税を計算する

26万500円 × 2.1% = 5470円(復興特別所得税)

源泉徴収で引かれている金額を差し引いた金額が確定申告の納税額です。

5.住民税を計算する

課税所得額 × 10% = 住民税
住民税は所得課税額に10%の税率で計算しますが、控除額が住民税と所得税では異なる設定になっていて、住民税の控除額は所得税の控除額よりも少なくなるケースがあります。

そこで、払いすぎを回避するために調整控除にて税額を抑えることができます。

住民税の調整控除

住民税の調整控除は以下の方法で計算します。

控除額の差額 - (課税所得額 - 200万円)× 5% = 調整控除額

この計算でいくと2500円未満になる場合がほとんどで、2500円未満の場合は2500円が調整控除額となります。

住民税の控除額は、

社会保険料等:280,000円
生命保険料控除:25,000円
扶養控除:330,000円(一般扶養親族のうち年齢16歳以上の者1人につき33万円)
基礎控除:330,000円
合計:96万5,000円

となり所得税の控除額との差額が11万5,000円です。

11万5,000円 - (355万5,000円 - 200万円)× 5% = マイナスになるので2500円(調整控除額)

355万5,000円 × 10% +4,000円(均等割)- 2,500円 = 35万7,000円(住民税)

住民税の通知方法に注意

会社員の方で海外FXや副業が会社にバレたくない方は、住民税の通知方法に注意しなければなりません。給与所得の住民税は通常は会社に送付される仕組みになっていて、確定申告にて給与以外の所得があったことがバレてしまいます。

そこで、確定申告の際には住民税の通知方法を選択することができます。

会社にバレたくない方は会社に通知が行かないように、住民税の納税方法を「普通徴収」で選択して下さい。

個人事業主の計算方法

個人事業主やフリーランスの方の計算方法を解説していきます。

所得税には基礎控除が38万円ですので、まず事業所得が48万円以下の方は確定申告は必要ありません。事業所得が48万円以上であっても、その他の控除額によって最終的にマイナスであれば税金はかかりません。

一般的に個人事業主の方の事業所得は48万円を超えるでしょうから、海外FXの利益が出た場合は金額を問わず確定申告しなければなりません。では計算方法を見ていきましょう。

1.海外FXの所得を計算する

100万円(海外FXの利益) - 10万円(必要経費) = 90万円(海外FX所得)

2.事業所得、その他の所得、控除額を計算する

事業所得

500万円(1年間の収入) - 必要経費(100万円) = 400万円(事業所得)

雑所得

40万円(1年間の収入) - 必要経費(5万円)= 35万円(その他雑所得)

控除額

社会保険料控除:59万円
基礎控除:38万円
個人年金保険控除:2万円
損害保険料:1万円

控除額の合計:100万円

所得の合計

400万円(事業所得)+ 90万円(海外FX所得)+ 35万円(雑所得)= 425万円(所得の合計)

3.所得税を計算する

425万円(所得の合計) - 100万円(控除額)= 325万円(課税所得額)

所得額が325万円の場合の税率は10%です。

(325万円 × 10%)- 97,500円(所得税控除額)= 227,500円(所得税)

4.復興特別所得税を計算する

227,500円 × 2.1% = 4,777円(復興特別所得税)

5.住民税を計算する

基礎控除が住民税では33万円となりますので、課税所得額が5万円増えます。課税所得額に10%を乗じて計算します。

調整控除にて

(330万円 × 10%)+ 4,000円(均等割)-2,500円 = 33万1,500円(住民税)

上記では白色申告の場合で解説しています。青色申告にすると65万円の基礎控除が受けられるなど控除の特例があり、課税額を大幅に節減できます。

主婦・学生の計算方法

主婦・学生の方で給与所得がある場合は、海外FXの利益が20万円を超えると税金の対象となります。会社員の計算方法と同じ方法で計算していきます。

主婦・学生の方で、他に所得がなく海外FXの利益のみを計算する場合は以下のようになります。

学生の海外FX税金

海外FX所得

100万円(海外FXの利益) - 10万円(必要経費)= 90万円(海外FX所得)

控除額

基礎控除:38万円
社会保険料控除:20万円

控除の合計金額:50万円

課税所得額

90万円 - 50万円 = 40万円(課税所得額)

所得税

40万円 × 5% = 20,000円(所得税)

復興所得税

20,000円 × 2.1% = 420円(復興特別所得税)

住民税

基礎控除が33万円になるため、課税所得額は45万円です。

(45万円 × 10%)+4,000円(均等割)-2,500円 = 46,500円(住民税)

主婦の海外FX税金

海外FX所得

100万円(海外FX利益)- 10万円(必要経費)= 90万円(海外FX所得)

課税所得税

主婦の場合は一般的に夫の扶養控除に入っていますので、控除額は基礎控除38万円となります。

90万円 - 38万円 = 52万円(課税所得税)

所得税

52万円 × 5% = 26,000円(所得税)

復興特別所得税

26,000円 × 2.1% = 546円(復興特別所得税)

住民税

基礎控除が33万円になるので、課税所得額が57万円です。

(57万円 × 10%)+ 4,000円(均等割)- 2,500円(調整控除)= 58,500円(住民税)

扶養家族である本人が確定申告をすることによって、扶養家族控除を受けている納税者の税金負担が増えることになります。主婦の方だけでなく、学生や祖父母など扶養家族の対象となる方は、海外FXで利益が出始めた時に家族に相談しておくことが大切です。
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以下の記事では海外FXの税金の仕組みや、確定申告の方法について詳しく解説しています。合わせて参考にして下さい。

まとめ

まとめ

海外FXの税金は必要経費を差し引いた金額となるため、いかに必要経費を計上するかが節税のポイントとなります。あとは、利用できる控除がないかどうか詳しく調べておくことも大切です。

必要経費や控除で課税所得額が小さくできれば、それだけ支払う税金も少なくて済みます。FXでは累進税率によって所得額に応じて税率が変わります。ちょうど税率が変わる微妙な金額となる場合は、あえて含み損を決済して損益を出しておくのも1つの方法です。保有しておきたいポジションなら決済後にまたエントリーすることができます。

税金の仕組みはややこしいので、最初は困難に感じる方も多いかと思います。海外FXの利益、その他収入、経費や控除の金額、所得区分、税率、とポイントを抑えて順番に1つ1つ進めていけば、初めての方でも自分で計算できます。

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また、国税庁のe-Taxの書類作成ツールや、各種ソフトを利用すれば、額面の入力だけで自動計算してくれるものもあります。計算が難しいなと感じた方は、確定申告用のツールやソフトをネットで探してみるといいでしょう。

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ABOUTこの記事をかいた人

個人投資家、ライター、アナリスト。海外メディアを駆使した市場リサーチが強み。副業トレーダーを経て、フリーランスとして独立。 株式投資、FX、金プラチナ、債券、外貨預金、ETF・投資信託、不動産などの分散投資を得意とする。