税金の時期がやってきました。海外FXの税金を少しでも安くするために損益通算はできないのか、と疑問に思う投資家は多いのではないでしょうか。損益通算にて、課税所得額が抑えられれば、支払う税金もその分安くなり助かりますよね。
海外FXの損益通算は、国内FXとは仕組みや計算方法が異なり、損益通算ができないケースもあります。また、それぞれの状況によって効果的なやり方が変わってきます。損失を無駄にしないためにも、効果的な損益通算の方法を知りたいですよね。
海外FXの確定申告
まず、最初にお伝えしておきたいのは、海外FXと国内FXでは税金の種類や計算方法が異なります。例外もありますが、原則として海外FXと国内FXの損益通算はできません。
海外FXの損益通算について詳しく解説していく前に、最初に海外FXの税金の仕組みや国内FXとの違いを確認しておきましょう。
海外FXの税金の仕組み
海外FXで税金がかかるのは、
- 給与所得がある → 海外FX所得20万円以上
- 専業FX → 海外FX所得48万円以上(その他の投資所得も含めて)
- 個人事業主 → 総所得が48万円以上
が対象となります。
海外FXの所得
課税対象となる海外FX所得とは、
利益がそのまま課税対象となるわけではありませんので注意して下さい。必要経費を差し引いた所得が課税対象となった時に確定申告が必要です。
海外FXの税金の種類
海外FXの所得にかかる税金は「総合課税の雑所得」になります。給与所得、その他の所得と合算した総所得額に累進課税の税率がかかります。
- 税区分 → 総合課税
- 税率 → 累進課税
- 所得区分 → 雑所得
累進課税とは、所得額が増えるほど税率が高くなる税制度のことです。では、累進課税の税率を確認しておきましょう。
累進課税の税率
海外FXの所得(または総所得)に応じて規定の税率を乗じた金額から控除額を差し引いた金額が課税額になります。
海外FXの所得(総所得) × 累進課税の税率 − 控除額(源泉徴収済の給与所得など)
=海外FXの課税金額
その他の税金
所得税以外でも、
- 住民税10%
- 復興特別所得税2.1%
上記2つの税金が課されます。
国内FXの税金の仕組み
国内FXで確定申告が必要となる基準は、
- 給与所得がある → 海外FX所得20万円以上
- 専業FX → 海外FX所得48万円以上(その他の投資所得も含めて)
- 個人事業主 → 総所得が48万円以上
となり、必要経費を差し引いた所得で判断します。条件的には海外FXと同じです。
国内FXが海外FXの税金が大きく異なる点は、国内FXの税金は分離課税に区分されることです。
国内FXの税金の種類
国内FXの所得は「申告分離課税の雑所得」になります。
申告分離課税とは、
その他の給与所得や雑所得と切り離して課税される税金のことで、個別で申告する必要があります。
申告分離課税の税率
申告分離課税は例外を除いて、原則として一律20.315%の税率で計算されます。
FXの所得が課税対象となった場合は、その金額を問わず多くても少なくても20.315%の税率になります。
税率の内訳
- 所得税15%
- 復興特別所得税0.315%
- 住民税5%
住民税や復興特別所得税が込となっていますので、計算が簡単でわかりやすいのが特徴です。
海外FXの損益通算はできるのか
海外FXは、国内FXとの損益通算はできませんが、それぞれの状況によって損益通算することが可能です。
海外FXで損益通算ができるケース
損益通算が可能なのは以下のケースです。
- 複数の海外FX口座がある
- その他の雑所得がある
- FXを事業としている
海外FXで損益通算ができるケースを見ていきましょう。
海外FX口座が複数ある
海外FX口座が複数ある場合は、口座ごとに残高の状況が異なりますよね。12月31日の時点で損失が確定している口座があれば、損失額を計上して海外FX所得を小さくすることが可能です。
例えば3つの口座の資産状況が、
- 海外FX口座A → 利益50万円
- 海外FX口座B → 利益50万円
- 海外FX口座C → 損失50万円
だったとします。
損失が50万円が出ている口座の分を計上せずに、利益のみを算出したら2つの口座で100万円です。100万円から必要経費を差し引いた分に税金がかかるわけですが、損失分を計上すれば利益は50万円になります。
損失の分50万円分をきちんと差し引くことで、最終的な海外FXの利益は50万円にまで低減します。さらに必要経費を差し引くならば、課税対象外となるかもしれませんよね。
雑所得が海外FX以外にもある
雑所得が海外FX以外にもある方には朗報です。海外FXの損失は、総合課税の雑所得が他にあれば損益通算が可能なのです。
例えば、ネット通販やアフィリエイトの収入が年間で50万円あったとします。海外FXの損失が50万円だとすれば、差し引きゼロ円となり雑所得の申告が不要となります。
FXを事業としている場合(専業トレーダー)
海外FX投資家の中には、国内FXや株式などを事業所得として申告している方もいるでしょう。専業トレーダーや個人投資家の場合、投資の収益を事業所得としている方は、海外FXとの損益通算が可能です。
- 株式取引の利益100万円→ 事業所得
- 国内FXの利益100万円 → 事業所得
- 不動産投資の利益100万円 → 事業所得
- 海外FXの損失100万円 → 事業所得
事業所得は総合課税で計算される税金ですので、その他の投資で得た利益から海外FXの損失額を差し引くことができます。
海外FXの損益通算ができないケース
では、わかりやすいように、海外FXの損益通算ができないケースについても確認しておきましょう。
損益通算ができないケースとは、
- 海外FX口座が1つのみ
- 海外FX以外の雑所得がない
- 海外FXは事業ではない(副業、兼業トレーダー)
上記3つの場合ですね。
損益通算できない場合は、「海外FXの損失 = 確定申告は不要」となります。
損失の繰越は基本的にはできない
海外FXの損失が繰越できれば非常に助かるのですが、基本的に海外FXの損失は繰越ができません。
- 国内FXの損失 → 申告分離課税の雑所得 → 3年間の損失の繰越できる
- 海外FXの損失 → 総合課税の雑所得 → 繰越できない
基本的に、と前置きしたのは海外FXを事業所得とする場合は繰越が可能だからです。
海外FXの損失が繰越できるケース
海外FXの損失が繰越できるケースとは以下の条件を満たしている方です。
- 投資を事業としている
- 海外FXを事業所得で申告する
- 青色申告をする場合
株式や国内FX、海外FXなどの投資全般を事業としている専業トレーダー・個人事業主は、青色申告にすることで「3年間の損失の繰越が可能」となります。
海外FXで損益通算できる所得の種類
海外FXの損失と通算できるその他の所得は、「総合課税の雑所得」に該当するものです。
そもそも雑所得とは?
総合課税の雑所得とは、以下の9種類の所得以外のものをいいます。
- 利子所得
- 配当所得
- 不動産所得
- 事業所得
- 給与所得
- 退職所得
- 山林所得
- 譲渡所得
- 一時所得
給与所得
給与所得は会社員やアルバイト・派遣などが就業先から受け取る給料のことです。通常は受け取る際に源泉徴収によって税金が差し引かれています。給与所得のみの場合は、確定申告は必要ありません。生命保険控除や医療控除などを受けた場合は、確定申告をすることで余計に支払った税金が戻ってきます。
事業所得
事業所得は、個人事業主やフリーランス、農業やサービス業などで得る所得のことです。弁護士や医師などの士業系、モデルや翻訳家などの収入も事業所得となります。事業所得は年間の収入から必要経費を差し引いて計算します。
配当所得
配当所得は株式・投資信託等の投資によって受け取る配当金のことです。配当所得は基本的に受け取る際に源泉徴収されるケースが多いですが、利用している口座によっては各自で確定申告が必要になります。源泉徴収されている配当所得は確定申告の必要はありません。
利子所得
利子所得は預金や公社債に付く利息のことです。原則として、利子所得はあらかじめ金融機関によって税金が差し引かれていますので、確定申告は必要ありません。
不動産所得
不動産所得は土地や建物の賃貸による所得です。不動産を売買して得た所得とは区別されています。 船舶や航空機の貸付けで得る所得も不動産所得となります。不動産所得は確定申告が必要です。
山林所得
山林所得は山林を伐採して売却、または立木のまま譲渡して得た所得のことです。山林を所得してから5年以内に譲渡した場合は事業所得か雑所得に区分されます。
一時所得
一時所得は生命保険の満期保険金や懸賞やキャンペーンなどで得た賞金・キャッシュバックの所得のことです。一時所得を得るために使った費用と控除額50万円を差し引いて算出します。一時所得金の半分を課税所得額として計上します。
退職所得
退職所得は就業先の会社から支払われる退職金のことです。通常は会社の方で源泉徴収していますので確定申告の必要はありません。
譲渡所得
譲渡所得は土地や建物、株式やゴルフ会員権などの資産を売却して得た所得のことです。収入の金額から必要経費を差し引いた金額に課税されます。譲渡所得は株式など口座によっては源泉徴収済みで受け取る場合もあります。源泉徴収されていない譲渡所得は確定申告をして税金を払います。
総合課税の雑所得
では、具体的に海外FXと損益通算が可能な「総合課税の雑所得」にはどのようなものがあるのかをご紹介します。
海外FXの収入
給与所得や事業所得が別である場合、海外FXの収入は総合課税の雑所得となります。国内FXは申告分離課税の雑所得となるので注意しましょう。
ネット通販・アフィリエイトの収入
他に本業があって、ヤフーオークションやメルカリなどで販売している方の売り上げは総合課税の雑所得です。ネット通販が本業の場合は事業所得なので海外FXとの損益通算はできません。
年金収入
公的年金や保険会社から受け取る個人年金は雑所得なので通算できます。満期保険金の返還金は一時所得となり通算できません。
非営業用貸金の利子
個人的な貸金の利子は雑所得なります。損益通算の対象です。
印税・デザイン料
本業や給与所得があって、印税やデザイン料などを得た場合はこれも総合課税の雑所得で通算可能です。
仮想通貨取引の収入
仮想通貨の場合で得た収入は、総合課税の雑所得です。海外FXと損益通算できます。
事業所得で申請する場合に損益通算できるもの
国内FX、株式、仮想通貨、先物・オプションなど、投資で得た収入を事業所得としている方は、海外FXと損益通算することができます。
専業トレーダー・個人事業主が対象です。
損益通算に活用できる両建てテクニック
それでは、最後に海外FXの損失を「節税に活用できる両建てテクニック」をご紹介しておきたいと思います。
両建てとは?
どれだけ為替変動があったとしても、「ロング」と「ショート」でつねに相殺されていくので、プラスマイナスゼロの状態が継続するのが特徴です。
※スワップやスプレッドのコストはかかります。
この両建てを活用して、あえて「含み損」が出ている方のポジションを決済するのです。
含み損を決済して損失額を作る!
両建てした場合は、必ず「ロング」か「ショート」のどちらかがマイナスとなっています。2つのポジションのうち、「含み損」が出ている方のみを年末に決済するのです。
損失額のみ申告分として計上することができるのです。
両建ての活用には十分な注意が必要
ただし、スワップやスプレッドのコストがかかり、年末年始の急激な為替変動にて損失が拡大するリスクがあります。中級者以上で両建て経験がある方のみトライしてみて下さい。
慣れていないと決済時に混乱する恐れがあり、初心者の方にはおすすめできません。
まとめ
今回は海外FXは損益通算できるのか?損益通算の方法や通算できるものを解説していきました。
まず、一番に注意したいのは、
ということです。
損益通算できるケースとは、
- 複数の海外FX口座がある
- 総合課税の雑所得が他にもある
- 事業所得で申告する場合
と主に3つとなります。
それぞれの状況によって、海外FXの損益通算の方法が異なりますので、今回ご紹介した内容を参考にしてみて下さい。
せっかく節税できるのであれば、負け分も上手に活用していきましょう!