FXで必ずチェックしておきたい経済指標の1つがFRB政策金利です。FRB政策金利は米国の金融政策のことですが、世界のすべての通貨はFRB政策金利の影響を受けるといっても過言ではありません。どの通貨ペアを取引するとしても、FRB政策金利は最も重要度が高い経済指標だといえます。
FRB政策金利が発表されると、結果次第で急激な為替変動が起こることもしばしばです。多大な損失リスクが生じるのもさることながら、短時間でも大きく稼げるチャンスでもあります。
あらかじめ、FRB政策金利が予想できればトレードに有利ですよね。
FRB政策金利の重要性
CMEが提供している「Fed Watch Tool」を使えば、概ねのFRB政策金利の利上げ(利下げ)や、現在のレートへの織り込み度合いをチェックすることができます。
そもそもCMEとは?FRBとは?
と疑問に思う方もいるかもしれませんよね。まずはCMEやFRBの概要や特徴、FRB政策金利の重要性について解説していきたいと思います。
CMEとは
CMEとは、
CMEは、原油、金、トウモロコシ、通貨、S&P500、NYダウミニ、日経225、など数多くの先物取引・デリバティブ商品を取り扱っている世界最大の先物取引所となります。CMEの取引価格が世界の先物商品をはじめ、あらゆる金融商品の価格を左右しているため、大手投資機関を含めた世界中の投資家から注目されています。
いわゆるCMEの取引価格は、世界の金融商品の指標として非常に重要視されているのです。
FRBとは
FRBとは、
FRBは、Federal Reserve Bank/連邦準備銀行を指して使われることもあります。Federal Reserve Bank/連邦準備銀行は米国の中央銀行のことで、日本でいうところの日本銀行にあたる存在です。Federal Reserve Bank/連邦準備銀行の政策・方針を協議する会合がFOMC/連邦公開市場委員会で、FOMCの会合で協議された内容を最終的に決定するのがFRBというわけですね。
FRBの役割
FRBの役割は、主に「雇用の最大化」と「物価の安定」を実現することにあります。
- 利上げをするか?利下げをするか?現状維持か?
- ゼロ金利を導入するか?
- 国債買い入れをするか?
など、米国経済の重要指標となる金融政策がFRBによって決定・公表されているのです。
FRBの政策金利
FRBが決定する金融政策、とくに金利の上げ・下げは、通貨をはじめとするあらゆる金融商品に大きな影響を与えています。
金利が下がると・・・
金利が下がると、金利負担が低くなり事業投資が促進・拡大して株価が上がります。株価が上昇することで、景気が良くなり物価が上昇します。物価が上昇することで、通貨の価値が低くなり、通貨安から貿易黒字となり輸出産業が活性化します。
一方では、債券の利回りが下がり債券の価格は上昇します。
金利が上がると・・・
金利が上がると、金利負担から事業が縮小し株価が下がります。株価が下がることで、景気が悪くなり物価が下がります。物価が下がることで、通貨の価値が高くなり、通貨高から貿易赤字を引き起こします。
一方では、債券の利回りが高くなることで債券の価格が下がります。
CME「Fed Watch Tool」とは
FRBの政策金利発表を世界中の投資機関・投資家が待ち構えています。FXやあらゆる金融市場に強い影響を与えるFRBの政策金利が、もし先読みできたらトレードに有利です。
「Fed Watch Tool」とは、
「Fed Watch Tool」の概要・特徴
「Fed Watch Tool」では、米国の「フェデラルファンド金利先物」の動向を基盤に政策金利が予想される仕組みになっています。
米国の政策金利は、ほぼ「フェデラルファンド金利先物」に反映するという考え方に基づいたものです。
「フェデラルファンド金利先物」とは
「フェデラルファンド金利先物」とは、
なぜ、米政策金利が「フェデラルファンド金利先物」に反映されるのかというと、もともと「フェデラルファンド金利先物」という商品自体が、米政策金利への将来的な観測から取引される商品だからなのです。
30日フェドファンド先物・オプション取引は、米連邦準備制度理事会の金融政策の変更によってもたらされる短期金利の変化に対してヘッジしたい、あるいは投機したいと思っている人にとって重要なリスク管理のツールです。
フェドファンド先物の価格は、所与の暦月について、ニューヨーク連邦準備銀行が計算・報告する日次のフェドファンドの実効金利の平均値に対する市場の意見を反映します。
なぜなら、フェドファンド先物取引は、所与の月について日次のフェドファンドの実効金利に基づいているからです。
従って、「フェデラルファンド金利先物」からFRB政策金利の予想が可能だというわけです。
CME「Fed Watch Tool」の見方
では、CMEの「Fed Watch Tool」の見方を解説していきます。
「Fed Watch Tool」にアクセスする方法
「Fed Watch Tool」にアクセスする方法は簡単です。CME「Fed Watch Tool 日本語版」で検索すると「Fed Watch Tool」のページにダイレクトにアクセスできます。
または下記のURLからも「Fed Watch Tool」にアクセスできます。
「Fed Watch Tool」のFOMCカウントダウン
トップページに、次のFOMC開催までのカウントダウンが表示されます。秒単位でも表示されますので、発表直後・前後の瞬間的なタイミングを狙うことができます。
「Fed Watch Tool」メニューの見方
Tool画面の右上にメニューがあります。
上から順番に、
Target Rate(目標レート)
- Current:現在
- Compare:比較
- Probabilities:確率・可能性
Historical(過去のデータ)
- Historical:過去のデータ
- Download:エクセルダウンロード
- Prior Hikes: 過去の利上げ
Dot Plot(ドット表示)
- Chart:チャート
- Table:表チャート
上部の横に並んでいる日付は、今後のFOMCの予定です。データを調べたい日付をクリックして見ることができます。
「Current」の見方
- FOMCのスケジュールに合わせた「フェデラルファンド金利先物」の取引情報
- 現在の目標レート(確率・可能性) 「0-25 → 94.0%」
- 現在の目標レート(確率・可能性) 「25-50 → 6.0%」
- 目標レート(確率・可能性)の推移 → 現在、1日前、1週間前、1か月前
上図のグラフで見ると、まず利下げの可能性は0だということになります。
- 「0-25」FRBの金融政策は金利0~25%の確率が94.0%と優勢
- 「25-50」ポイントの利上げの確率がわずか6.0%
次回のFRBの金融政策は、金利据え置きの可能性が非常に高いと判断できます。上図のように、目標レートにばらつきがない場合は、すでに市場では金利の据え置き予測が織り込み済みと判断できます。
FRBの発表が想定どおりに据え置きとなれば、あまり市場への強い影響は見られないと予想されます。これが、もしまったく想定外の結果となるならば、当日の米ドルの動きもかなり激しくなる可能性があります。
また、目標レートの幅にばらつきが見られる時も、当日までは油断できない状況だといえます。発表後に想定外の結果を見た投資家の売買が加速すると思われます。
「Probabilities」の見方
- 「フェデラルファンド金利先物」の期限別の取引価格(平均)の推移
- FOMCのスケジュールの目標レートの確率・可能性
- 今後のFOMCの目標レート比較
上図では利上げ観測は9月以降は6.00%から5.60%へと減少しています。現段階では、何か新しい材料が出てこない限りは、2021年度内の利上げは可能性が低いと見ることができます。
「フェデラルファンド金利先物」は期限が30日になるデリバティブ商品なので、1か月ごとに商品名が異なります。取引価格は、金利予測が織り込まれた価格となっています。
「フェデラルファンド金利先物」の金利の計算
ファンドの実効金利が平均2.0%と予想される場合は、「100 - 2 = 98」となり「98.000ドル」で取引されることになります。
例えば、99.9325ドルで取引されたとすれば、「100 - 99.9325 = 0.0675」となりファンドの実行金利は「0.0675%」つまり1%以下だということですね。
CME「Fed Watch Tool」の活用方法
それでは、実際に「Fed Watch Tool」をどのようにFXトレードで活用すればよいのかをご紹介しておきましょう。
利上げと利下げ
一般的に投資家の資金は、金利が低い国の通貨から金利が高い国の通貨へと移行する傾向にあります。
- 利上げ → 買いシグナル
- 利下げ → 売りシグナル
となりますので、FRBの利上げがあった時は「ドル買い」、FRBの利下げがあった時は「ドル売り」の目安にすることができます。
従って、「Fed Watch Tool」にて利上げの気配が出てきた時は、「ドル買い」で強気にいけるということになります。反対に利下げの可能性が高まってきた場合は、「ドル売り」が進む可能性があるということになります。
FRBの金融政策 発表前後
では、もし「Fed Watch Tool」で利上げの確率が高くなった時は、FRB発表前にドルを買っておけばよいのかというと、そうでもないのです。
「Fed Watch Tool」にて利上げが100%近く(90%台後半)であるならば、もう市場では利上げ観測が織り込み済みとなるからです。利上げが「買いシグナル」とはなるものの、FRB発表前に十分に織り込み済みの場合は大きな値上がりは期待できません。
- 「利上げ」が市場に織り込まれていない → 「利上げ」実施 → ドル高騰
- 「利上げ」が市場に織り込み済み → 「利上げ」実施 → ドル反応薄
- 「利上げ」が市場に織り込み済み → 金利据え置き → ドル売り加速
- 「利上げ」が市場に織り込まれていない → 金利据え置き → ドル反応薄
といったドルの動きが予想されます。
「Fed Watct Tool」は、FRBの金融政策を予想するというよりは、どの程度市場に予想が織り込まれているのかを判断するツールだといえます。
「Fed Watct Tool」の注意点
CMEの「FedWatchツール」は、あくまでも「フェデラルファンド金利先物」の取引価格を目安にFRBの金融政策予想の材料となる情報です。信頼性が高いツールではありますが、100%確実にFRBの金融政策がわかるツールではありません。
「市場では今後の米国の金融政策をどう見ているか」金利観測の織り込み度合いがわかるツールであり、「売り」「買い」「エントリー・エグジットのタイミング」を決めるのは投資家自身であることに注意しましょう。
まとめ
CMEが提供している「Fed Watch Tool」はCMEの公式サイトから誰でも無料で利用することが可能です。
FRBの発表前に、市場の「利上げ」「利下げ」「据え置き」への織り込み度合いを見ることで、発表直後にどう動けばよいのかが見えてきます。「利上げ」「利下げ」そのものよりも、市場の予想と異なるのかどうかが、発表直後の売買を決めるポイントとなります。
ぜひ、この機会にCMEの「Fed Watch Tool」を使って、FRBの発表を待ち構えてチャレンジしてみて下さい。