シカゴIMM通貨先物ポジションの見方・使い方・活用法

FX市場には世界中のトレーダー・投資家、金融機関・投資機関が参加しています。いうまでもなく、すべての市場参加者の売買状況から為替レートも左右されていきます。中でも、為替レートの動向に大きな影響を与えているのが、FX市場のメインプレーヤーといわれている大手金融機関・投資機関、ヘッジファンド系の取引です。

英国や米国の大手投資機関となれば、取引する規模も桁違いに巨額となります。これら投機筋の1つ1つの取引から、為替レートは大きく上下していきます。世界の大手投機筋の取引状況がわかれば、大いにFXトレードで役に立ちますよね。

そこで、チェックしておきたいのが「シカゴIMM通貨先物ポジション」です。

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「シカゴIMM通貨先物ポジション」では、世界のメインプレーヤー達の動向を知ることが可能です。今回は、「シカゴIMM通貨先物ポジション」とは一体どんなツールなのか、見方・使い方、活用方法などをわかりやすく解説していきます。ぜひ、FXトレードに役立てて下さい。

シカゴIMM通貨先物ポジションとは

シカゴIMM通貨先物ポジションとは、

シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の国際通貨市場IMM(International Monetary Market)における、ショートやロングのポジション状況のことです。各週のデータが全米先物取引委員会(CFTC)のサイトにて公開されています。

国際通貨市場IMM

国際通貨市場IMMは、シカゴマーカンタイル取引所(CME)が提供している取引市場で、世界最大級の通貨先物・オプション市場となります。

CMEグループの通貨デリバティブ市場は、1日約1,090億ドル規模の出来高を誇り、世界中の顧客、世界最大規模の資産クラスが取引に参加しています。シドニー市場がオープンしてから最後のシカゴ市場がクローズするまで、1日平均5兆3,000億ドルもの通貨が取引がされているのです。

国際決済銀行(BIS)が3年おきに公開している統計調査によると、2019年4月あたりの通貨の取引量は6.6兆ドル。大半の取引が国際通貨市場IMMにて取引されているのだといえます。

世界最大の国際通貨市場IMMのポジション状況のデータとなる「シカゴIMM通貨先物ポジション」は、FX市場そのもののデータといっても過言ではなく、世界のFX市場の指標とされているのです。

機関投資家が参加するIMM

IMMに参加する世界中の顧客を代表するのが、大手金融機関・投資機関などの機関投資家です。

IMMの参加部門は大きく2つに分けられています。

  • Commercial/商業部門 → いわゆるビジネス・貿易系の通貨の取引
  • Non Commercial/非商業部門 →投機筋の通貨の取引

投機筋とは

保険会社、投資信託、信託銀行、投資顧問、ヘッジファンド、年金基金、個人投資家などの投機を目的とした市場参加者のことです。

シカゴ・マーカンタイル取引所を主に利用するのは、個人投資家も含めた投機筋であって、中でも大手系の機関投資家が多いといわれています。

つまり、FX市場を左右している世界の投機筋の動きが「シカゴIMM通貨先物ポジション」からチェックできるということです。

IMM通貨先物ポジションで公開されるデータ

IMM通貨先物のポジション状況は、全米先物取引委員会(CFTC)によって公開が義務づけられています。

CFTCの公式サイトにて、毎週金曜日の取引終了後にロング(買い)とショート(売り)の未決済のポジション数が公開されています。ただし、データはその週の火曜日時点のものとなるので、3営業日ほど遅れてしまうのが弱点です。

確かに、IMM通貨先物ポジションにて世界の投機筋のポジション状況が確認はできるものの、役に立たないと思われる短期トレーダーもいるかもしれません。

しかし、IMM通貨先物はその名称どおり先物です。将来の通貨のレートを見込んで取引するため市場動向を把握する上では、これらのデータはFXトレードにおいて非常に強力な武器となり得るでしょう。

もちろん、このデータがすべてではないので、あくまでも参考にするという使い方がおすすめです。

データーが確認できるサイト

IMM通貨先物ポジションを確認する方法は2パターンあります。

  1. CFTCの公式サイトからIMM通貨先物ポジションを確認する(英語オリジナル版)
  2. 日本の証券会社・FX会社などが公開しているIMM通貨先物ポジションを確認する(日本語版)
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IMM先物通貨ポジションを確認する方法として、上記の2パターンをこれから詳しく解説していきたいと思います。

CFTCのサイト版シカゴIMM通貨先物ポジション

CFTCの公式サイトで公開されているIMM通貨先物ポジションが本来の公開データ・オリジナル版となります。

CFTCとは

Commodity Futures Trading Commisonを略したもので、先物取引・オプション取引全般を監督・規制する政府機関のことです。日本語では全米先物取引委員会と呼ばれています。

米国のすべての先物取引所はCFTCへの登録が義務づけられていて、定期的に顧客データを報告しなければならないのです。シカゴ・マーカンタイル取引所も先物取引の規制上、IMM通貨先物ポジションのデータを報告しているわけですね。

IMM通貨先物ポジションの見方・使い方

CFTCのトップ画面にある「Historical Compresed – CFTC」からデータをテキストかエクセルでダウンロードできます。

そのままブラウザで見たい方は以下の方法で確認できます。

1.「Commitment of Trader」のページにアクセスする

トップ画面のメニュー「Market Data & Economic Analysis」を選択し、「Commitiment of Trader」をクリックしてページにアクセスします。

2.下の方までスクロールしてFormatを選択

ページが表示されたら、下の方までスクロールして「Current Legacy Report」のリストから「Chicago Mercantile Exchange」の欄を確認して下さい。

2.下の方までスクロールしてFormatを選択

閲覧できるFormatは4種類あります。ここでいうLong Formatは細かいデータが見れる内容、Short Formatはシンプルなデータが見れる内容、となっています。

  • 「Future Only」 → Long Format Short Format
  • 「Future-and-Options-Combined」 → Long Format Short Format

上記の項目からチェックしたいものをクリックするとデータの画面が出てきます。

一番わかりやすいのは、「Future Only Short Format」です。

3. チェックしたい通貨をスクロールして探す

データの画面を開くと、様々な商品のデータが順番に出てきますので、チェックしたい通貨の箇所までスクロールしていきます。

4.データを確認する

4.データを確認する

チェックするポイントは、

  • JAPANESE YEN : 日本円
  • 日付
  • NON-COMMERCIAL:非商業部門/投機筋
  • ポジション数
  • 先週との比較

これらのデータです。

CFTCでチェックできる通貨

CFTCのデータでチェックできる通貨は、

  • 日本円
  • 米ドル
  • スイスフラン
  • 英ポンド
  • ユーロ

などで、他にもユーロポンドなどのぺアや、メキシコペソや南アフリカランドなどの新興国通貨もチェックできます。

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最初は慣れないと、データの見方がややこしく感じるかもしれませんが、ポイントを抑えて見れば英語が苦手でも簡単に見れるようになります。

日本語サイト版シカゴIMM通貨先物ポジション

CFTCが公開しているIMM通貨先物ポジションのデータを、日本の証券会社やFX会社が独自で作成したグラフを利用する方法もあります。

膨大な数のデータを、わかりやすくグラフで視覚化してあるのでおすすめです。

IMM通貨先物ポジションを公開しているサイト

IMM通貨先物ポジションを独自で公開しているサイトは、

などがあります。

上記のサイトでは、誰でも無料でアクセスして利用できます。

セントラル短資IMMの見方・使い方

ここでは、セントラル短資のIMM通貨先物ポジションのグラフの見方・使い方を解説していきます。

1.チェックしたい通貨ペアを選択する

1.チェックしたい通貨ペアを選択する

セントラル短資のIMM通貨先物ポジションのページにアクセスして、チェックしたい通貨ペアを選択します。

2.グラフからポジション状況を確認する

2.グラフからポジション状況を確認する

上記のグラフでは、過去4か月間の投機筋のポジションの状況が確認できます。今が買い相場なのか、売り相場なのか、どのような流れで推移しているのか目安にすることができます。

ぱっと見で判断するなら、3月16日あたりから円/ドルのロングは半分以下に減少、ショートのポジションが2~3倍に増えていることがわかります。投機筋では円が下がるとの見解が主流だと見ることができます。

ただ、直近では円売りがやや減少傾向にあり、円買いが進む可能性がうかがえます。

このグラフの場合は、通貨ペアの名称が「円/米ドル」となっていて、通常の「米ドル/円」とは動きが逆になるので注意して下さい。
分析・解釈の参考例
  • 日本円売り: -64,562
  • 日本円買い: +27,248
  • 日本円差し引き: −37,314
  • 前回比増減: +9,801

直近のデータでは「円売り」が優勢となっていますが、前回との比較では円はプラスの数値となっていて、「円買い」が若干進行していることがわかります。

円売りが一旦底をついて、やや持ち直してきていると見ることができます。もし、米ドルのネガティブな材料が集まれば円が上昇、米ドルのポジティブな材料が集まれば、「円売り」が優勢な状況からは抜けきれないと予想できるでしょう。

OANDAのIMMの見方・使い方

米ドル/円のIMM通貨先物ポジションであればOANDAのグラフが無料で利用できます。その他の通貨ペアは口座開設してゴールド会員になると利用可能となります。

米ドル/円のIMM通貨先物ポジション
米ドル/円のIMM通貨先物ポジション

OANDAのIMM通貨先物ポジションで確認できるのは、

  • 投機筋のロング・ショートポジション
  • 為替レート
  • ネットポジション
  • 未決済ポジション数

となります。

約3年間の投機筋のポジションの推移が確認できます。

シカゴIMM通貨先物ポジションの活用方法

IMM通貨先物ポジションは、投機筋のポジションの推移・比率を見ることで、今後の相場動向を読む目安にすることができます。

  • どのような流れでポジション数が推移しているのか
  • 買いポジションの数と売りポジションの数
  • 直近のポジションの比率

などを見ることで、市場ではどのような見解が主流となっているのか、これから「買い」が優勢となるのか「売り」が優勢となるのかを見極める材料となります。

買いポジションと売りポジション

  • 買いポジションが多い = 市場は買い相場 → 為替レートは上昇する
  • 売りポジションが多い = 市場は売り相場 → 為替レートは下落する
  • 買いポジションがピークになり減少しつつある = 買われすぎ → 為替レートは下落する
  • 売りポジションがピークになり減少しつつある = 売られすぎ → 為替レートは上昇する

ポジションの傾き・ピーク値を確認する

基本的に買いポジションの方が多ければ相場は上昇、売りポジションの方が多ければ相場は下降する傾向にあります。

ただし、買いポジションの数が増えすぎてピークを迎えると逆に今度は利確売りが出始めて、下降する要因となります。同様に、売りポジションの数が増えすぎてピークを迎えると買いが入り始めて、上昇する要因となるのです。

ファンダメンタルズ・テクニカルの要素も考慮する

IMM通貨先物ポジションの情報に加えて、かつ、ファンダメンタルズ・テクニカル分析を考慮することで、より的確な相場分析が可能となります。

例えば、米ドル/円で買いポジションが増えている中、FRBのポジティブなニュースがあれば、さらに買いポジションが急増して上昇に向かうと見ることができます。

また、買いポジションの数値が高くなりすぎた時は、テクニカル上のレジスタンスラインにて大量の利確が入る可能性があると想定できます。

IMM通貨先物ポジションを活用する注意点

最後に、IMM通貨先物ポジションを活用する上での注意点をいくつかまとめておきます。

  • IMM通貨先物ポジションの情報がすべてではない
  • 通貨先物には現物取引は反映されていない
  • 日本版では個人投資家や貿易などの取引は反映されていない
  • 最新の情報ではない(約3日~4日のタイムラグ)

IMM通貨先物ポジションはFXトレードで多いに役に立つ情報となりますが、この情報がFX市場のすべてではありませんので注意して下さい。

また、最新の経済ニュースにて重要な発表があったとしても、IMM通貨先物ポジションにはタイムラグがあり反映されてませんので、こちらも考慮する必要があります。

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ちなみに、市場参加者の動向を知る方法として「OANDAオーダーブック」というツールがあります。こちらも合わせて参考にしてみて下さい。
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また、以下の記事ではFRB金利政策予想の目安となる「CME Fed Watch Tool」をご紹介しています。合わせて参考にして下さい。

まとめ

シカゴIMM通貨先物ポジションとは

シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の国際通貨市場IMM(International Monetary Market)における、ショートやロングのポジション状況のことです。
為替レートを左右する投機筋のポジション状況が分かることで、FXトレードにおいて強力な武器となり得ます。
IMM通貨先物ポジションは、
  • CFTCの公式サイト
  • 日本の証券会社・FX会社
にて確認することができます。
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相場を分析する方法は、IMM通貨先物ポジションがすべてではありませんが、今後の相場動向を読むうえで大いに役に立つ情報だといえます。ファンダメンタルズやテクニカルを考慮しながら、ぜひ、活用してみて下さい。

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ABOUTこの記事をかいた人

個人投資家、ライター、アナリスト。海外メディアを駆使した市場リサーチが強み。副業トレーダーを経て、フリーランスとして独立。 株式投資、FX、金プラチナ、債券、外貨預金、ETF・投資信託、不動産などの分散投資を得意とする。